土用は夏だけではない
「土用」と聞くと、多くの人が思い浮かべるのは、
夏の土用の丑の日
ではないでしょうか。
うなぎを食べる日として知られているため、「土用=夏」という印象が強くなっています。
しかし、暦の上の土用は夏だけではありません。
春・夏・秋・冬の年4回あります。
それぞれ、
- 立春の前
- 立夏の前
- 立秋の前
- 立冬の前
に置かれています。
つまり土用は、四季それぞれの終わりに現れる雑節です。
📅 土用は二十四節気ではなく「雑節」
土用は、立春や夏至、秋分などの二十四節気そのものではありません。
暦では、
雑節
の一つとして扱われます。
国立天文台・暦計算室の「二十四節気・雑節」でも、土用は雑節として掲載され、太陽の黄経を基準に示されています。
現在の基準では、土用入りは次の位置です。
冬の土用 太陽黄経297度
→ 立春315度の前
春の土用 太陽黄経27度
→ 立夏45度の前
夏の土用 太陽黄経117度
→ 立秋135度の前
秋の土用 太陽黄経207度
→ 立冬225度の前
それぞれ、次の「立」まで18度あります。
☀️ 太陽黄経で見る四つの土用
四季の土用を太陽の位置で並べると、仕組みがよく分かります。
| 土用 | 土用入り | 次の節気 |
|---|---|---|
| 冬の土用 | 黄経297° | 立春315° |
| 春の土用 | 黄経27° | 立夏45° |
| 夏の土用 | 黄経117° | 立秋135° |
| 秋の土用 | 黄経207° | 立冬225° |
四つとも、
次の季節が始まる18度手前
から始まります。
暦計算室の長期版でも、この4つの黄経が土用の基準として使われています。2026年の場合も、1月297°、4月27°、7月117°、10月207°で土用入りが示されています。
この形を見ると、土用が夏だけの特別な期間ではなく、一年を四季に分けたとき、それぞれの終盤に置かれた期間であることが分かります。
🗓 なぜ「約18日間」なのか
土用は一般に、
約18日間
と説明されます。
太陽は一年をかけて黄道を一周します。
土用入りから次の四立までの角度は18度です。
ただし、暦の日付として数えると、毎年必ず同じ日数になるわけではありません。
土用入りの時刻と、立春・立夏・立秋・立冬の時刻との関係によって、暦日としての期間には多少の違いが生じます。
そのため記事では、
「18日間」と固定するより「約18日間」
としておくのが適切です。
🌿 四季の終わりに置かれる土用
一年を順に見てみます。
冬の土用
立春の前。
寒さの厳しい時期から、暦の上の春へ向かいます。
春の土用
立夏の前。
春が終わり、暦の上の夏へ向かいます。
夏の土用
立秋の前。
暑さの盛りの中で、暦の上の秋へ向かいます。
秋の土用
立冬の前。
晩秋から、暦の上の冬へ向かいます。
こうして見ると、土用は、
季節の途中に置かれた特別な第五の季節
ではなく、
それぞれの季節の終盤に置かれた期間
と理解すると分かりやすくなります。
🌏 土用と五行思想
では、なぜ「土用」という名前なのでしょうか。
その背景には、中国で発達した五行思想があります。
五行では、自然や世界の成り立ちを、
木・火・土・金・水
という五つの要素によって捉えます。
季節との対応では、一般に、
春=木
夏=火
秋=金
冬=水
とされます。
すると、「土」が四季のどこにも入っていません。
そこで「土」を各季節の終わりに配し、四季の間に土の期間を置くという考え方が生まれました。
これが、土用の歴史的・思想的背景を理解する一つの手がかりです。
ここで重要なのは、五行思想による由来の説明と、現在の暦で土用入りを決める基準とは分けて考えることです。
☀️ 思想上の由来と、現在の暦の基準
土用には五行思想という歴史的背景があります。
一方、現在の暦要項や暦計算室で示される土用は、
太陽黄経
を基準にしています。
つまり、
なぜ「土用」という期間が考えられたのか
→ 五行思想など歴史・思想の領域
現在、いつを土用入りとするのか
→ 太陽黄経による暦の基準
です。
この二つを混ぜないことが大切です。
五行思想を否定する必要もありませんし、逆に現在の土用の日付を五行だけで説明する必要もありません。
由来と現在の暦法を二層に分けると、土用がずっと分かりやすくなります。
🏮 土用に結びついた習俗
土用には、長い歴史の中でさまざまな民間習俗も結びついてきました。
その一つとして知られるのが、
土公神(どくじん・どこうじん)
です。
土をつかさどる神として考えられ、土用の期間には土に関する作業を慎むという伝承も生まれました。
また、土用期間中でも一定の日を、
間日(まび)
として扱う民間暦もあります。
ただし、これらは現在の暦要項が土用を定める基準そのものではありません。
土用という雑節に、後世の信仰・民間暦・選日の考え方が重なっていったものとして見るとよいでしょう。
このサイトでは、土公神や間日の吉凶判断そのものへ深入りするのではなく、暦文化の歴史的背景として概要を紹介する立場を取ります。
🐂 「土用の丑の日」とは
土用の中でも特に有名なのが、
土用の丑の日
です。
十二支は年だけではなく、日にも順番に割り当てられます。
子、丑、寅、卯……と12日周期で巡るため、土用期間中にも「丑の日」があります。
夏の土用の丑の日が特に有名ですが、丑の日そのものは夏にしか存在しないわけではありません。
春・秋・冬の土用にも、期間中に丑の日が巡ることがあります。
また、土用期間は約18日あるため、一つの土用の中に丑の日が2回入る年もあります。
その場合は、
一の丑
二の丑
と呼ばれます。
🍱 なぜ夏の土用だけが有名なのか
夏の土用の丑の日には、
うなぎ
を食べる習慣がよく知られています。
そのため現在では、土用という言葉自体が夏の行事のように受け止められることがあります。
しかし、これは土用全体の仕組みから見ると一部分です。
まず、
土用は年4回ある。
その中に、
十二支の「丑の日」が巡ってくる。
そして、夏の丑の日が特に食文化と強く結びついた。
という順番で理解すると整理しやすくなります。
「土用=丑の日」でも、
「土用=うなぎの日」でもありません。
🌱 土用を「健康法」として説明しすぎない
土用について調べると、
「体を整える期間」
「デトックスの時期」
「気を調える期間」
などと説明されることがあります。
現代の暮らしの提案として使われること自体はありますが、これらは土用の暦上の定義ではありません。
土用そのものを理解するなら、まず、
年4回ある雑節
四立の前に置かれる
太陽黄経によって土用入りが定められる
という仕組みを押さえることが先です。
そのうえで、昔の人が季節の変化をどう受け止め、どのような習俗を結びつけていったのかを見る。
この順番の方が、暦としての土用と、後世の暮らしの知恵を混同せずに理解できます。
🌸 春の土用
春の土用は、
太陽黄経27度
に達したときから、立夏の前日までです。
期間の中には二十四節気「穀雨」が入ります。
春が深まり、初夏へ向かうころです。

☀️ 夏の土用
夏の土用は、
太陽黄経117度
に達したときから、立秋の前日までです。
期間の中には二十四節気「大暑」が入ります。
四つの土用の中でも、「土用の丑の日」によって最もよく知られています。

🍂 秋の土用
秋の土用は、
太陽黄経207度
に達したときから、立冬の前日までです。
期間の中には二十四節気「霜降」が入ります。
秋の実りから、冬へ向かうころです。

❄️ 冬の土用
冬の土用は、
太陽黄経297度
に達したときから、立春の前日までです。
期間の中には二十四節気「大寒」が入ります。
寒さの厳しい時期を通って、暦の上の春へ向かいます。

🔄 四つの土用を並べると一年が見える
四季の土用を順に並べると、
冬土用 → 立春
春土用 → 立夏
夏土用 → 立秋
秋土用 → 立冬
となります。
そして再び冬の土用へ。
四つの土用は単独の行事ではなく、四季の循環の中に規則正しく置かれています。
二十四節気が一年を24の節目に分けるのに対し、土用はその四季の終盤に位置する雑節です。
この位置関係を理解すると、「なぜ夏以外にも土用があるのか」が自然に見えてきます。
📚 暦計算室で見る土用
国立天文台・暦計算室では、二十四節気とともに土用などの雑節を確認できます。
たとえば2026年は、
- 冬土用入り 1月17日・黄経297°
- 春土用入り 4月17日・黄経27°
- 夏土用入り 7月20日・黄経117°
- 秋土用入り 10月20日・黄経207°
とされています。
ただし、この記事では特定年の日付を覚えることよりも、
297°・27°・117°・207°という四つの位置
を知っておくことが大切です。
年が変わっても、土用の暦上の仕組みそのものは変わりません。
💬 ひとこと
土用は、夏だけのものではありません。
春にも。
秋にも。
冬にもあります。
四季それぞれの終わりに置かれ、次の「立」へ向かう約18日間。
その背景には五行思想があり、現在の暦では太陽黄経によって土用入りが示されています。
さらに長い歴史の中で、十二支、土公神、間日、食文化など、さまざまな習俗も重なってきました。
まず暦の仕組みを知り、
その上に歴史や文化を見る。
そうすると、「土用」という言葉が、夏の丑の日だけではない一年を四季でつなぐ雑節として見えてきます。
土用(どよう)は、立春・立夏・立秋・立冬の前に訪れる約18日間のことを指します。
一年の中で4回あり、四季が切り替わる前の “調整・緩衝帯” の役割を持つ雑節です。
「土用=夏・うなぎ」というイメージが広く知られていますが、
土用は本来“季節を整えるための静かな時間”として、古くから大切にされてきました。
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