🌱 雑節・春の土用 ― 春を整え、夏を迎える養生のとき
目次
🌤 自然 ― 春から夏への境目に
「土用(どよう)」とは、立春・立夏・立秋・立冬の前、およそ18日間を指します。
四季の移り変わりのあいだに位置する“季節の調整期”であり、自然の気が入れ替わる大切な時期とされてきました。
春の土用は、立夏(5月5日ごろ)の前、つまり4月17日ごろから5月4日ごろまで。
令和8年(2026年)の春の土用入りは**4月17日9時01分、太陽黄経27°**です。
このころ、春の暖かさが次第に増し、若葉が青々と萌え出す季節。
同時に、寒暖差や気圧の変化で体がだるく感じやすい時期でもあります。
自然界では草木が一気に成長し、人の体もまた次の季節に向けてリズムを整えていくタイミングです。

【土用】(どよう)
春の土用は立夏前の18日間のこと、
今年の土用の入りは 4月17日
春の土用 太陽黄経: 27°
🏠 暮らし ― 体を整え、夏の準備を
春の土用は、古くから「土を休める」「体を養う」期間とされてきました。
冬の間に溜まった疲れを癒やし、夏の暑さに備えて体調を整える――
いわば“春の養生期”です。
農作業では、田植え前の土づくりが進みますが、昔は「土用の間は土を動かさない方がよい」とも言われ、地鎮祭や建築を控える風習もありました。
これは、土を司る神「土公神(どくじん)」が地上を巡る時期とされたためです。
また、暮らしの面では「春の土用掃除」「衣替えの準備」など、季節の区切りを感じる行いが多く見られます。
春のほこりを払い、新しい季節を迎える心の整え――
それが春の土用の本質です。
🍲 旬 ― 新緑の味わい、体にやさしく
春の土用は、ちょうど新緑がまぶしい時期。
山菜や若葉、そして初夏の食材が出回りはじめます。
- たけのこ・わらび・ふき … 体の老廃物を流す「デトックス」の恵み。
- 新玉ねぎ・春キャベツ … 甘みがあり、胃腸を整える優しい味わい。
- 鰹(かつお) … 「初鰹」は春の風物詩。生命力を補うたんぱく源。
- 新茶 … 春の香りとともに、リラックスと抗酸化の力をもたらす。
この時期は、「旬の苦味」をとることが体の調子を整えるといわれます。
ふきのとうやうど、菜の花など、少しの苦味が春の名残を教えてくれます。
📚 文化 ― 土用と“変わり目”の思想
五行思想では、春・夏・秋・冬の間をつなぐ“第五の季節”が「土用」。
四季それぞれの“変わり目”に「土の気」が支配すると考えられました。
つまり、土用とは単なる期間ではなく、自然の循環の“呼吸”なのです。
現代では「土用」と聞くと“うなぎの夏”を思い浮かべますが、実際はこの春の土用にも多くの知恵が残っています。
季節の節目に、無理をせず、自然のリズムに合わせて休む――
それが、昔からの日本人の生き方でした。
🗓 暦 ― 太陽黄経27°、春の締めくくり
国立天文台の暦要項によれば、春の土用入りは太陽黄経27°の時刻(令和8年4月17日9時01分)。
そこから18日間が「春の土用」となります。
次の節気・立夏を迎えると、暦の上ではもう夏。
春の恵みが満ちるいま、自然と体を整え、ゆるやかに次の季節へと橋をかける時期です。
💬 ひとこと
春の終わりの光は、やわらかく穏やか。
草木の緑がいっそう深まり、風の香りが初夏を知らせます。
心と体を静かに整えながら、新しい季節のリズムを迎える――
春の土用は、“季節の呼吸を取り戻す”ための時間です。
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