🌷 雑節・彼岸(春の彼岸)― 太陽と心の中日、春を結ぶ祈りのとき
目次
自然 ― 昼と夜が等しくなるころ
春の彼岸は、春分の日を中日として、前後3日を合わせた7日間を指します。
令和8年(2026年)の春彼岸は、3月17日が彼岸の入り、3月20日が春分の日(中日)、3月23日が彼岸明けです。
昼と夜の長さがほぼ等しくなるこの時期、太陽は真東から昇り、真西に沈みます。
その姿はまるで、冬と春、陰と陽、此岸と彼岸――
あらゆるものが調和する瞬間を象徴しているかのようです。
寒さがようやくやわらぎ、梅から桜へと花がつながる季節。
大地は芽吹き、鳥たちの声が響きはじめ、春の彼岸はまさに「生命の再生」を感じる頃です。

【彼岸】(ひがん) 春の彼岸
春分の前後の3日ずつ計7日のこと。
3月17日が彼岸の入り、3月20日が春分の日(中日)、3月23日が彼岸明け。
暮らし ― 祖先を思い、春を迎える日々
日本では古くから、春分と秋分の彼岸を祖先供養の期間として大切にしてきました。
「彼岸」は仏教の言葉で、煩悩に満ちた此岸(しがん)から悟りの彼岸(ひがん)へ渡ることを意味します。
太陽が真西に沈むこの時期、西方浄土の信仰と重なり、自然と人の祈りが一体となった行事として定着しました。
お墓参りをし、仏壇に手を合わせ、季節の花を供える――
春の彼岸は、日々の生活の中で「感謝と再出発」を感じる機会でもあります。
春風が心をほどき、やさしい光の中で祖先に語りかけるような時間。
その静けさが、日本人の暮らしに深く根づいています。
食と文化 ― ぼたもちと春の香り
春の彼岸には「ぼたもち」を供える風習があります。
これは春に咲く牡丹の花にちなんでおり、秋の彼岸の「おはぎ」と対になります。
小豆の赤い色には魔除けの意味があり、古来より邪気を払う食べ物として尊ばれてきました。
また、この時期は旬の山菜が芽吹き始める頃。
ふきのとう、菜の花、わらびなど、ほろ苦い味わいが春を告げます。
“芽吹きを食べる”という感覚は、長い冬を越えた体に新しい力を取り戻す自然の知恵といえるでしょう。
暦の中の彼岸 ― 春分を中心に
雑節としての彼岸は、二十四節気の「春分」と密接に結びついています。
暦の上では、冬を完全に終え、春が定着する節目。
太陽が地球の赤道上を通過することで昼夜が等しくなり、古来、人々はこの均衡の瞬間を「調和」と「祈り」の象徴としてきました。
国立天文台の暦要項によると、令和8年の春分は3月20日。
昼夜が交わるその瞬間に、自然も人の心も、新しい季節のリズムを歩みはじめます。
ことわざと心
「暑さ寒さも彼岸まで」――
この言葉は、春の彼岸にもぴったりあてはまります。
厳しい寒さがようやく和らぎ、やわらかな日差しとともに、人々の心もほどけていく。
春の彼岸は、自然と調和し、祖先とともに新しい季節を迎える“祈りと再生”の時間です。
次の雑節… 土用(春の土用)

ひとつ前の雑節… 節分

関連記事
