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雑節・彼岸(秋の彼岸・彼岸の入り)
日本の暦には、二十四節気や七十二候に加えて、季節の移り変わりを生活実感として伝える「雑節(ざっせつ)」が設けられています。
そのひとつが「彼岸(ひがん)」です。彼岸は春分と秋分を中日として、それぞれ前後3日を合わせた7日間を指します。
つまり「彼岸の入り」は中日の4日前、「彼岸明け」は3日後にあたります。
2025年の秋彼岸は9月19日から25日までで、その中日である9月23日が秋分の日となります。

【彼岸】(ひがん)
春分と秋分の前後の3日ずつの計7日のこと。
初日を彼岸の入り、当日を中日(ちゅうにち)、終日を明けと呼ぶ。
彼岸の由来と文化
「彼岸」という言葉は仏教に由来します。煩悩に覆われた此岸(しがん、こちらの岸)から、悟りの境地である彼岸(ひがん、あちらの岸)に渡ることを象徴した言葉で、日本では春分・秋分と結びつきました。
昼と夜の長さがほぼ等しくなるこの時期、太陽は真西に沈みます。西方浄土の思想と重なり、祖先を供養する行事として彼岸が根づいていったのです。
秋の彼岸では「おはぎ」が供えられることもよく知られています。春の彼岸には牡丹の花にちなみ「ぼたもち」、秋は萩にちなみ「おはぎ」と呼ばれます。いずれも小豆の赤色が魔除けの意味をもち、供養とともに季節の移ろいを感じさせる食文化です。
暦の流れと彼岸
雑節としての「彼岸」は、二十四節気に直接含まれるものではありません。しかし実際の暦の流れで見てみると、「白露」の末期から「秋分」へと移行する狭間に彼岸入りが位置します。
暦計算室の定める二十四節気の日付に沿って年中行事を整理すると、雑節が折り込まれる場所がはっきりと見えてきます。暦のリズムを知るうえで、雑節は欠かせない存在です。
季節の実感とことわざ
「暑さ寒さも彼岸まで」という言葉があるように、彼岸は季節の区切りを象徴する言葉でもあります。実際には近年、地球温暖化の影響で残暑が長引き、「彼岸を過ぎても暑い」という年も少なくありません。それでも朝晩の涼しさや空の高さからは確実に秋の気配が訪れ、彼岸が季節を感じ取る目安となっていることは変わりません。
また、この時期は台風シーズンと重なることが多く、昔から「彼岸の頃は荒れる」とも言われてきました。行楽や墓参りの予定を立てる際には、台風や秋雨前線の影響を念頭に置く必要があります。
2025年の秋彼岸
2025年は9月19日が「彼岸入り」、23日が「秋分の日(中日)」、25日が「彼岸明け」にあたります。
気象庁の3か月予報によると、この年は残暑がやや長引く傾向が見込まれています。昼間は暑さが続く一方で、朝夕は涼しく、彼岸らしい寒暖差が際立つ時期となりそうです。お墓参りや行楽の際には、急な天候の変化や台風接近に注意したいところです。
まとめ
雑節としての「彼岸」は、暦の区切りと人々の生活文化が結びついた象徴的な存在です。仏教由来の祖先供養の習慣が、春分・秋分という天体のリズムと結びつき、日本独自の風習として定着しました。
秋の彼岸は、夏から秋へと季節が切り替わる大切な節目。白露から秋分へと移り変わる暦の中で「彼岸の入り」が差し込まれ、私たちに祖先を偲び、季節を感じるひとときを与えてくれます。
参考記事
二十四節気のほかにも、こよみには季節を示す目印がいくつかあり、これらをまとめて雑節と呼びます。


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