目次
第5章 六十干支とは何か
―― 展開と循環の融合 ――
1 なぜ六十なのか
六十干支とは、
十干(じっかん)
×
十二支(じゅうにし)
の組み合わせによって生まれる六十の循環体系です。
甲子(きのえね)から始まり、
乙丑(きのとうし)、
丙寅(ひのえとら)……と進み、
癸亥(みずのとい)で六十番目に至ります。
そして六十一番目で、再び甲子に戻ります。
ここで重要なのは、
10 × 12 = 120
ではなく、
最小公倍数 60
であるという点です。
十干は10で一巡。
十二支は12で一巡。
両者が同時に元の位置に戻るのは60回目。
これが六十干支の数学的構造です。
しかし六十干支は単なる数合わせではありません。
それは、
展開(十干)と循環(十二支)が同期する瞬間
を制度化したものなのです。
2 十干は「質」を与える
十干は、
甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸
という十の段階です。
五行(木・火・土・金・水)を陰陽で二分した体系であり、
時間に「性質」を与えます。
甲は木の陽。
乙は木の陰。
丙は火の陽。
十干は、変化の質的展開を示します。
時間は単なる流れではなく、
異なる気を持つ
と考えられたのです。
3 十二支は「位置」を与える
十二支は、
巡る枠組みです。
子から亥へと回る循環構造。
方位・月・日・時刻を区切るための座標体系でした。
十二支は時間の「場所」を示します。
十干が質を与えるなら、
十二支は位置を与える。
この二つが重なったとき、
時間は「質」と「位置」を同時に持つことになります。
4 六十干支の本質
六十干支は、
質(十干)
×
位置(十二支)
の掛け合わせです。
しかし、それは単なる交差ではありません。
十干は前へ進み続けます。
十二支は巡り続けます。
その動きがズレながら重なり合うことで、
60の独自の時間単位
が生まれます。
つまり六十干支は、
時間を一回りの物語として捉える思想
なのです。
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5 六十という数の意味
六十は偶然の数字ではありません。
10と12の最小公倍数であり、
展開と循環が同時に整う最初の地点です。
60日で一巡。
60年で一巡。
人の一生を象徴する数でもありました。

還暦とは、
干支が生まれ年に戻ること。
それは「終わり」ではなく、
循環の完成と再出発
を意味します。
ここに、
時間は回帰する
という思想が明確に表れています。
6 六十干支は時間の「層」を作る
六十干支は、
年
月
日
時
すべてに適用されました。
ある日は丙寅であり、
ある年は壬辰である。
この体系は、
時間を立体化しました。
単なる日付ではなく、
気を帯びた時間
が存在することになります。
ここから暦注や選日思想が展開していきます。
六十干支は、
暦注の基礎骨格
なのです。
7 数学を超えた思想
六十干支を単なる最小公倍数の問題と見ることもできます。
しかし古代の人々は、計算のために六十を採用したのではありません。
彼らは、
展開と循環が一致する地点
に秩序を見出しました。
変化し続ける世界と、巡り続ける自然。
その両方を同時に説明する枠組みが、
六十干支だったのです。
ここには、
世界は秩序を持つ
という確信があります。
8 日本における六十干支
六十干支は、中国で成立し、日本へ伝わりました。
日本では、年号と並行して六十干支が使われ、
日付の公式記録にも用いられました。
さらに民間では、
年回り・厄年・方位判断などに結びつきます。
六十干支は、
国家暦と民間暦をつなぐ共通基盤
でもありました。
9 六十干支の思想的意味
六十干支とは、
時間を質と位置の両面から捉える体系です。
それは、
展開する時間と、巡る時間の融合
です。
直線と円環が交差し、
六十という周期を生み出す。
そこに、
人間は時間を理解できる秩序として再構築しました。
六十干支は、
宇宙秩序を人間の歴史へ接続する装置
だったのです。
まとめ
六十干支とは、
十干の展開と十二支の循環が融合した時間体系です。
それは単なる計算結果ではなく、
時間に質と位置を同時に与える思想でした。
この骨格の上に、
選日思想と暦注体系が築かれていきます。
六十干支は、
宇宙の運行と人間の営みを結ぶ「接点」
なのです。
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