■②豆まきの起源と意味|なぜ節分に豆をまくのか
目次
🫘 はじめに──「鬼は外、福は内」の本当の意味
節分といえば、
「鬼は外、福は内」
と声をあげて豆をまく光景が思い浮かびます。
この豆まきは、単なる年中行事ではなく、
疫病・災い・不安を追い払い、新しい季節を迎えるための“儀式”
として長い時間をかけて形づくられてきました。
では、
なぜ「豆」なのでしょうか。
なぜ「鬼」を追い払うのでしょうか。
その背景には、
日本古来の信仰と、中国由来の思想が重なり合っています。
🌾 1.豆まきの原型──穀物に宿る「霊力」
豆まきの根底には、
穀物に霊的な力が宿る
という古い信仰があります。
日本では古くから、
- 米
- 麦
- 豆
といった穀物は、
人の命を支えるだけでなく、
災いを祓う力をもつ存在(穀霊)
と考えられてきました。
豆はその中でも、
- 丈夫で保存がきく
- 種として再生力が強い
という性質をもち、
「命を打ち出す力」
を象徴する存在だったのです。
👹 2.「鬼」とは何か──目に見えない災いの象徴
節分の「鬼」は、
必ずしも空想上の怪物ではありません。
古い時代の鬼とは、
- 疫病
- 飢饉
- 天候不順
- 争い
- 不安や恐れ
といった、
人の力では制御できない“災いそのもの”
を象徴する存在でした。
つまり豆まきは、
鬼を追い払う
= 災いを外へ追い出す
という、
極めて現実的な祈りの行為だったのです。
🏯 3.中国から伝わった「追儺(ついな)」の影響
豆まきの直接的な原型とされるのが、
中国の宮中行事 「追儺(ついな)」 です。
追儺とは、
- 年の終わりや節目に
- 鬼疫を追い払う儀式
で、
日本には奈良時代に伝わりました。
平安時代には、
宮中で次のような行事が行われています。
- 仮面をつけた鬼役を追い立てる
- 矛や弓で邪気を払う
- 大声で追い出す
これが日本化する過程で、
より身近な行為として
「豆を投げる」形 に変化していきました。
🫘 4.なぜ「豆」を投げるのか──言霊と信仰
豆まきには、
言葉の意味(言霊) も深く関わっています。
「豆(まめ)」は、
- 魔(ま)を滅(め)する
→ 魔滅(まめ)
という語呂合わせがなされ、
邪気を滅する象徴
として扱われました。
また、
生の豆ではなく 炒り豆 を使うのも重要です。
- 生豆 → 芽が出る → 災いが再生する
- 炒り豆 → 命を断つ → 災いが残らない
という考え方があり、
細かな点にも祈りが込められています。
🏡 5.日本で広まった「家の行事」としての豆まき
中世から近世にかけて、
豆まきは宮中や寺社だけでなく、
- 武家
- 農村
- 町家
へと広がり、
家ごとの年中行事 として定着しました。
この段階で、
- 鬼は外
- 福は内
という掛け声が一般化し、
家の中に福を招き入れる意味が強まります。
日本では特に、
「災いを追い出す」ことと
「福を迎え入れる」ことを同時に行う
という発想が大切にされてきました。
🌸 6.豆まきは「季節の切り替え装置」
節分は本来、
季節が切り替わる直前の不安定な時期 です。
だからこそ、
- 災いを払い
- 気持ちを整え
- 新しい季節へ踏み出す
ための儀式として、
豆まきが必要とされました。
豆を投げる行為は、
不安を外に出し
期待を内に迎える
という、
心の切り替えでもあったのです。
■ まとめ
豆まきは、
- 穀物信仰
- 鬼疫を払う思想
- 中国の追儺
- 日本の生活文化
が重なって生まれた、
非常に層の厚い行事 です。
単なる子どものイベントではなく、
季節と向き合い、
暮らしを整えるための
知恵のかたち といえるでしょう。



