🌺 穀雨・末候 牡丹華(ぼたんはなさく)
目次
🌤 自然 ― 春を飾る、牡丹の花ひらくころ
穀雨の末候は「牡丹華(ぼたんはなさく)」。
“牡丹の花が咲く”という意味で、令和8年(2026年)は4月29日ごろ、太陽黄経およそ40度。
春の終わりにふさわしく、華やかで気品に満ちた季節です。
冬の寒さに耐えた大地はすっかり柔らかく、風はぬるみを帯び、木々の若葉は濃く深くなっていきます。
その中で、ひときわ存在感を放つのが牡丹。
大輪の花がふっくらと開き、絹のような花びらが陽光を受けて輝きます。
「百花の王」と呼ばれる牡丹が咲くとき、春はその頂点に達し、まもなく立夏――夏への入口がすぐそこに見えてきます。
【穀雨】 (こくう)
穀物をうるおす春雨が降る
月: 三月中 太陽黄経: 30°

末候 牡丹華
(ぼたんはなさく)
牡丹の花が咲く
🏠 暮らし ― 花を愛で、春を見送るころ
牡丹の花期は短く、まるで春の夢のように咲いて散ります。
その儚さが、春という季節の美しさをいっそう際立たせます。
庭先に咲く牡丹を眺めたり、寺院の牡丹園を訪ねて花の香りを楽しむのも、この時期ならではの贅沢。
雨上がりのしっとりとした空気の中で見る牡丹は、まさに絵画のようです。
農家では田植えの準備が整い、里山では田の神を祀る行事が行われます。
“花を送り、苗を迎える”――そんな季節の交替が、穀雨・末候の心に宿る情景です。
🍲 旬 ― 春の名残と、初夏の香りを食す
牡丹の咲くころは、春と初夏の味覚が交わる季節。
たけのこ、ふき、そら豆、山うど、木の芽など、春の香りが名残をとどめながらも、初夏の走りとして新茶、若鮎、初鰹が登場します。
また、牡丹の名を冠した料理「牡丹鍋(いのしし鍋)」は、春を名残惜しむ郷土の味として知られています。
華やかな花にちなみ、贅を尽くした懐石や彩り豊かな皿盛りが似合う時期です。
春の締めくくりにふさわしい、香り高い季節の食卓です。


📚 文化 ― 百花の王・牡丹に見る美と祈り
牡丹は古くから“富貴の象徴”とされ、中国では王侯貴族の花として尊ばれました。
日本にも奈良時代に伝わり、平安の庭園や寺院で愛培され、やがて和歌や絵画にもその華やかな姿が描かれるようになります。
牡丹は春の美の結晶。
また、花言葉は「王者の風格」「富貴」「恥じらい」。
その堂々たる姿の中にも、どこか静かな気品が漂います。
牡丹華は“春を極める花”として、自然と人の美意識が最も調和する時期を象徴しています。
🗓 暦 ― 太陽黄経40°、春の掉尾に咲く花
牡丹華は太陽黄経40°前後、令和8年は4月29日ごろ。
次の節気は「立夏(りっか)」――暦のうえではもう夏です。
昼の光は一段と強まり、風は軽く、空は高く。
春の生命が最も充実し、やがて“成長の季節”へと移る直前の節目。
この候をもって、春は静かに幕を下ろします。
💬 ひとこと
牡丹の花が咲くと、空気まで華やぐようです。
春の光をすべて集めて放つかのように、短くも鮮やかに咲き誇る。
その一瞬の輝きこそ、春という季節の結晶。
牡丹華――春の美しさを惜しみながら、夏への扉が静かに開かれるころです。
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