蛙始鳴(かわずはじめてなく)|田に声満ちる、初夏の幕開け
【立夏】(りっか)
夏の気配が感じられる
月: 四月節 太陽黄経: 45°


初候
蛙始鳴 (かわずはじめてなく)
蛙が鳴き始める
目次
🌿 自然 ― 田の水が温み、命が声を上げるころ
立夏は二十四節気の第7。春のやわらかな気配は姿を変え、季節ははっきりと「夏」へ踏み出します。
初候「蛙始鳴(かわずはじめてなく)」は、その名の通り 蛙がいっせいに鳴き始める時期。
夜気がぬるみ、田に水が張られ、草いきれがゆっくり濃くなりはじめる──そんな初夏の入口です。
昼の光は強く、影は夏らしく濃く伸び、土の匂いが雨を待つように立ちのぼります。
夕暮れ、ぬめるような湿り気を帯びた風が家々の軒をすり抜け、闇が降りると田の一面に蛙の声。
ケロケロ、グワッグワッ──まるで大合唱。
一匹の声ではなく、群れとしての響き。水田という巨大な舞台が、生き物たちの息づかいで満ちていきます。
蛙の合唱は、ただの音ではありません。
それは 生殖の季節の訪れであり、命が次代につながろうとする営みそのものです。
オタマジャクシの黒い影が水面に密集し、藻の影がゆらぎ、アメンボの小さな波紋が光を砕く──
初夏の田は、生命が目に見えて動き出す場所になります。

📷 街中の小河川のほとり
川面に映る空にも初夏の光が感じられ、川中の小石には小魚を狙う川鵜が集い、活発な生き物の気配を感じながら力を秘めて佇んでいます。
春の穏やかさに別れを告げるように、風は少しずつ暖かく、強くなり、
草木の緑がいっそう力を増してきました。
🌸 白く小さな花をたくさん咲かせる、かすみ草。
白く小さな花をたくさん咲かせる、かすみ草。
どこか控えめだけれど、確かにそこに咲くその姿が、
初夏の風景にやさしさを添えてくれます。
みどりの季節、やさしい花も静かに咲いています。

🏠 暮らし ― 田植え、苗の緑、湿り気を孕んだ土の季節
日本の農耕文化において、蛙の鳴き声は 田植えの合図として親しまれてきました。
苗代には細い稲がびっしりと並び、農家は水量を見極め、土の柔らかさを確かめながら植え付けを進めます。
・手にまとわる水はまだ冷たさを含む
・泥は指の間にやわらかく沈み込む
・風が運ぶ湿りは、作物の未来を孕んでいる
この時期の田んぼは、光と影が強く、空の青と水田の反射が重なり、まるで空が二枚あるようです。
アマガエル、トノサマガエル、シュレーゲルアオガエル──地域によって声も姿も違う。
耳を澄ませば「ここは水の季節である」と告げてくれます。
暮らしにも夏の支度が増えます。
衣替え、扇風機の試運転、寝具の薄手化。
麦茶ポットが棚から降ろされ、青梅やらっきょうが店に並び、台所には涼やかなガラス瓶。
生活はゆっくりと、でも確実に 夏のテンポへ移っていきます。

5月4日は「みどりの日」。
自然に感謝し、やすらぎを感じる日です。
自然や命に感謝をし、その恵みに思いをはせる祝日です。
新緑がまぶしいこの季節――
風にそよぐ木々の音や、草花の香りが日々の慌ただしさの中で、ふと心を和らげてくれます。
静かな視線で空を見つめるその姿には、
自然と人とのつながりや、祈りというものの原点があるように感じるのです。
🍽 旬 ― 青梅、若ごぼう、新じゃが/初夏の青い香り
蛙が鳴き始める頃、店先には早生の夏野菜が顔を出します。
・青梅=爽やかな酸と香り、梅シロップ・梅仕事が始まる頃
・新じゃが・新玉ねぎ=みずみずしい甘み、とろりと柔らかい煮物に
・そら豆=莢を開くとふわふわの布団、塩茹でで季節が真っ直ぐ届く
果物では、すもも・びわが初夏の短い旬として光ります。
甘酸っぱさ、皮の薄さ、露のような香り──一年でほんのわずかな贈り物です。
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💬 ひとこと
田の蛙の声は、夜風に乗って遠くまで届きます。
それは、静けさの中に息づく生命のざわめき。
耳をふさいでも染み込んでくるようなあの合唱は、
「季節は前へ進んでいるよ」と、毎年のように確かに告げてくれます。
春の終わりと夏の始まりのあわい──
蛙始鳴は、音で季節を知る節です。
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