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【穀雨・次候】 霜止出苗(しもやみてなえいずる)| 4月24日頃

🌿 穀雨・次候 霜止出苗(しもやみてなえいずる)

🌤 自然 ― 霜が止み、苗がすくすくと伸びるころ

 穀雨の次候は「霜止出苗(しもやみてなえいずる)」。

 “霜が降りなくなり、苗が伸びはじめる”という意味で、令和8年(2026年)は4月24日ごろ、太陽黄経およそ35度。

 夜の冷え込みがやわらぎ、朝露に春の温もりが混じる頃です。

 大地の寒気がすっかり抜け、水田では緑の苗が顔を出しはじめます。

 穏やかな風に稲の香が漂い、春の静けさの中にも、生命の息づかいが感じられます。

 霜が止むということは、自然界が完全に“冬の手”を放したということ。

 この候は、春から初夏への確かな転換点です。


【穀雨】 (こくう)

穀物をうるおす春雨が降る                

月: 三月中  太陽黄経: 30°

次候 霜止出苗
(しもやんでなえいづる)

霜が終り稲の苗が生長する

🏠 暮らし ― 寒の水と仕込みの季節

 水泉動の候は、「寒の水」が尊ばれる時期。

 寒中に汲む水は雑菌が少なく清らかで、酒や味噌、醤油、納豆などの仕込みに最も適するとされてきました。

 「寒仕込み」という言葉は、この季節の知恵をそのまま表しています。

 また、この頃は「寒稽古」「寒中水泳」など、心身を鍛える行事も多く行われます。

 厳寒に身を置くことで精神を清め、新しい一年に向けて心を鍛え直す意味が込められています。

 寺院では「寒修行」や「寒念仏」などの行も行われ、冬の静寂が人々の信仰心を深める時間となりました。

 家庭では、味噌や漬物、甘酒などの仕込みが進み、保存食を整える大切な時期でもあります。

 寒さの中で熟成が進むことで、味に深みと安定が生まれる――

 自然の理とともに暮らす日本人の知恵が、ここに息づいています。


🏠 暮らし ― 田植え前の支度、暮らしの整え

 霜が止むと、農家ではいよいよ苗代づくりの総仕上げに入ります。

 田に水を張り、土をならし、苗を育てる。

 この時期の農作業は、一年の豊穣を左右する大切な工程です。

 “霜が止んだら種をまけ”という言葉の通り、自然の動きを見極めることが、昔からの知恵でした。

 家庭でも、春の締めくくりに向けて心身を整えるころ。

 寒さが和らぐと、布団や衣類の入れ替え、家の中の湿気対策など、生活のリズムが変わってきます。

 雨の多いこの季節は、心を静める読書や手仕事にも最適。

 外では若葉が輝き、家の中では暮らしの芽が伸びていく――

 そんな“育つ季節”が霜止出苗です。

🍲 旬 ― 若苗とともに、春の味が満ちる

 霜が止むころ、山も野も若緑に染まり、春の味覚がいっそう深まります。

 たけのこ、ふき、わらび、うど、木の芽――

 まさに“若芽づくし”の時期。

 野菜では新玉ねぎやそら豆が出回り、やさしい甘みが食卓に春の終章を告げます。

 海では、桜鯛やしらす、初ガツオ、メバルが旬。

 特に“初鰹”は江戸の昔から縁起物とされ、「目に青葉 山ほととぎす 初鰹」と詠まれました。

 自然のめぐみが勢いを増すこの時期、春の名残と初夏の力を合わせた料理が似合います。



📚 文化 ― 苗に込められた祈りと循環の心

 苗が育つ光景は、古来から人々の信仰や詩歌に深く結びついてきました。

 「苗代田(なわしろだ)」は神聖な場とされ、そこに水を張る「御田植え」は、豊作祈願の神事として各地に残ります。

 農耕の営みは、単なる作業ではなく、自然との対話であり、人の祈りそのものだったのです。

 俳句でも、「苗代」「出苗(いでなえ)」は春の季語。

 静けさと光が溶け合うような光景が、この時期の情緒です。

 霜止出苗は、“いのちを託す”季節の言葉でもあります。

🗓 暦 ― 太陽黄経35°、春の終盤から初夏へ

 霜止出苗は太陽黄経35°前後。
 令和8年では4月24日ごろにあたります。

 春分から一か月あまり、季節は着実に進み、朝夕の寒気はもう感じられません。

 草木はすでに青々とし、次の節気「立夏」への助走が始まっています。

💬 ひとこと

 夜の冷えがやみ、朝の光がやわらかくなる。

 苗が育ち、人の心も軽くなっていく。

 霜止出苗――それは“育つ力”の象徴です。

 自然が静かに息づき、次の季節を迎える準備をしています。


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