🕊 清明・次候 鴻雁北(こうがんかえる)
目次
🌤 自然 ― 雁が北へ帰り、空に季節が移ろうころ
清明の次候は「鴻雁北(こうがんかえる)」。
“冬のあいだ南にいた雁が、北の空へ帰っていく”という意味です。
令和8年(2026年)は4月9日ごろ、太陽黄経はおよそ20度。
冬鳥が去り、夏鳥が来る――空の上で季節の交替が行われます。
朝の空には渡り鳥の列が見え、遠くで鳴き交わす声が響きます。
彼らの帰還は、自然の時計が正確に動いている証。
春が確かに進んでいることを教えてくれます。
【清明】(せいめい)
すべてのものが生き生きとして、清らかに見える
月: 三月節 太陽黄経: 15°

次候 鴻雁北
(こうがんきたへかえる)
雁が北へ渡って行く
🏠 暮らし ― 寒の水と仕込みの季節
水泉動の候は、「寒の水」が尊ばれる時期。
寒中に汲む水は雑菌が少なく清らかで、酒や味噌、醤油、納豆などの仕込みに最も適するとされてきました。
「寒仕込み」という言葉は、この季節の知恵をそのまま表しています。
また、この頃は「寒稽古」「寒中水泳」など、心身を鍛える行事も多く行われます。
厳寒に身を置くことで精神を清め、新しい一年に向けて心を鍛え直す意味が込められています。
寺院では「寒修行」や「寒念仏」などの行も行われ、冬の静寂が人々の信仰心を深める時間となりました。
家庭では、味噌や漬物、甘酒などの仕込みが進み、保存食を整える大切な時期でもあります。
寒さの中で熟成が進むことで、味に深みと安定が生まれる――
自然の理とともに暮らす日本人の知恵が、ここに息づいています。
🏠 暮らし ― 別れと新しい出発の季節
鴻雁北の候は、人の暮らしでも“別れと始まり”の時期。
卒業、入学、就職など、生活の節目が重なり、人の流れもまた、渡り鳥のように動きます。
新しい環境へ羽ばたく季節――
この候は、まさに人生の“春の旅立ち”を象徴します。
🍲 旬 ― 春から初夏への味の架け橋
桜鯛、あさり、メバル、さわら、しらす、わかめ。
春の海は活気づき、食卓に彩りをもたらします。
山では、たけのこ、うど、木の芽、山菜が盛りを迎え、若葉の香りが料理に春の息吹を添えます。
軽やかな食材で、春の疲れを癒す時期でもあります。


📚 文化 ― 渡り鳥に託す、季節の循環
古来、人々は渡り鳥の動きを暦の目印としてきました。
雁の北帰行は、“寒さの終わりと新しい年の始まり”を告げる象徴。
和歌や俳句にもたびたび登場し、 静かな空の移ろいが詠まれています。
鴻雁北は、“季節が旅をする”ことを教えてくれる候です。
🗓 暦 ― 太陽黄経20°、春の後半へ
清明・次候は太陽黄経20°前後。
春分から20日余り、昼の時間が明確に長くなります。
風は少し暖かく湿りを帯び、春から初夏への移り変わりを感じるころです。
💬 ひとこと
北へ帰る雁の群れを見上げると、季節がひとつ、静かに動いたことを知ります。
去るものと来るものが交わる空――
鴻雁北は、春の循環を象徴する候です。
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