🌸 春分・次候 桜始開(さくらはじめてひらく)
目次
🌤 自然 ― 桜の花が開き、春の光が満ちるころ
春分の次候は「桜始開(さくらはじめてひらく)」。
“桜の花が咲き始める”という意味で、令和8年(2026年)は3月25日ごろ、太陽黄経はおよそ5度。
風はやわらぎ、陽光はさらに明るさを増し、山野から街へ、春の色が一気に広がる時期です。
川沿いや校庭、公園では、つぼみがほころび始め、日を追うごとに淡紅の景色が広がります。
桜は春を象徴する花であり、その開花は自然のリズムの転換点。
冷たさを脱ぎ、世界が“春爛漫”へと向かう兆しです。
【春分】(しゅんぶん)
太陽が真東から昇って真西に沈み、昼夜がほぼ等しくなる
月: 二月中 太陽黄経: 0°

次候 桜始開
(さくらはじめてひらく)
桜の花が咲き始める
🏠 暮らし ― 寒の水と仕込みの季節
水泉動の候は、「寒の水」が尊ばれる時期。
寒中に汲む水は雑菌が少なく清らかで、酒や味噌、醤油、納豆などの仕込みに最も適するとされてきました。
「寒仕込み」という言葉は、この季節の知恵をそのまま表しています。
また、この頃は「寒稽古」「寒中水泳」など、心身を鍛える行事も多く行われます。
厳寒に身を置くことで精神を清め、新しい一年に向けて心を鍛え直す意味が込められています。
寺院では「寒修行」や「寒念仏」などの行も行われ、冬の静寂が人々の信仰心を深める時間となりました。
家庭では、味噌や漬物、甘酒などの仕込みが進み、保存食を整える大切な時期でもあります。
寒さの中で熟成が進むことで、味に深みと安定が生まれる――
自然の理とともに暮らす日本人の知恵が、ここに息づいています。
🏠 暮らし ― 花を待ち、花を愛でる日々
この時期、人々の暮らしも一気に明るくなります。
桜前線の便りが各地から届き、花を待つ気持ちが日本中に満ちていきます。
花見の準備や散歩、行楽、春の旅支度――
季節とともに心が外へ向かう時期です。
また、卒業式や入学式、引っ越しなど、人生の節目と重なる季節でもあります。
桜の開花は別れと出会い、始まりと終わりを象徴し、その儚さが春の情緒をいっそう深めます。
🍲 旬 ― 花の季節の味わい
桜のころには、旬の食材も華やぎを増します。
菜の花、うど、たけのこ、アスパラガス、山うどなど、香りと歯ざわりのよい春野菜が揃い、
桜の葉や花を使った和菓子も出回り始めます。
桜餅や桜茶、桜あんの饅頭――
味覚のうえでも“花を愛でる”楽しみが広がります。
魚では、桜鯛(真鯛)、いさき、白魚、しらすなどが旬。
ちらし寿司や蛤のお吸い物と合わせ、春の彩りを楽しみます。


📚 文化 ― 桜にこめられた日本人のこころ
桜は古来より、日本人の美意識を象徴する花。
その一瞬の咲き誇りと儚さが「無常」と「希望」を同時に映します。
平安時代には“花”といえば桜を指し、『古今和歌集』以来、和歌や俳句の中心的な題材でした。
桜は咲いても散っても美しく、人の心の移ろいを映す鏡のような存在です。
桜始開の候は、まさに“春の感性が極まる”時期です。
🗓 暦 ― 太陽黄経5°、春爛漫の入口
春分・次候は太陽黄経5°前後。
啓蟄から約20日、日照時間が明らかに長くなり、昼の光が空間を満たしていきます。
国立天文台の暦要項によれば、令和8年は3月25日ごろがこの候。
各地の桜前線が本州を北上し、自然と人の心がいっせいに“花の季節”を迎えます。
💬 ひとこと
風にのって花の香が届くと、春が形になったように感じられます。
桜が咲くということは、世界が光を取り戻し、人の心も開くということ。
桜始開は、春という季節の“微笑み”です。
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