🌸 啓蟄・次候 桃始笑(ももはじめてさく)
目次
🌤 自然 ― 桃の花ほころび、春の彩りひらくころ
啓蟄の次候は「桃始笑(ももはじめてさく)」。
“桃の花が咲き始める”という意味で、令和8年(2026年)は3月11日ごろ、太陽黄経はおよそ350度。
寒気がようやくやわらぎ、野山や庭に淡い桃色が広がり始めます。
“笑”は“咲”の古語。
花がほころび、人の顔に笑みが浮かぶように、自然界が柔らかにほほえむ季節です。
春の陽射しに誘われ、虫や鳥の動きも活発になり、風景全体が明るく軽やかになります。
【啓蟄】 (けいちつ)
冬ごもりしていた地中の虫がはい出てくる
月: 二月節 太陽黄経:345°

次候 桃始笑
(ももはじめてさく)
桃の花が咲き始める
🏠 暮らし ― 寒の水と仕込みの季節
水泉動の候は、「寒の水」が尊ばれる時期。
寒中に汲む水は雑菌が少なく清らかで、酒や味噌、醤油、納豆などの仕込みに最も適するとされてきました。
「寒仕込み」という言葉は、この季節の知恵をそのまま表しています。
また、この頃は「寒稽古」「寒中水泳」など、心身を鍛える行事も多く行われます。
厳寒に身を置くことで精神を清め、新しい一年に向けて心を鍛え直す意味が込められています。
寺院では「寒修行」や「寒念仏」などの行も行われ、冬の静寂が人々の信仰心を深める時間となりました。
家庭では、味噌や漬物、甘酒などの仕込みが進み、保存食を整える大切な時期でもあります。
寒さの中で熟成が進むことで、味に深みと安定が生まれる――
自然の理とともに暮らす日本人の知恵が、ここに息づいています。
🏠 暮らし ― 春の彩りを迎える日々
桃の花は古来、魔除けと再生の象徴とされ、このころから「桃の節句」の支度が整います。
雛人形を飾り、白酒やひなあられで春を祝う家庭も多く、子どもの健やかな成長を願う行事として受け継がれています。
また、外出や散歩を楽しむのにも良い季節。
花を愛で、光を浴び、冬の重さを手放すように過ごすころです。
🍲 旬 ― 花の香りを映す春の味
菜の花、うど、アスパラガス、春キャベツ、新じゃがなど、みずみずしく甘い食材が食卓を彩ります。
魚では、鰆(さわら)、にしん、ハマグリが旬を迎え、潮の香りが春の風とともに広がります。
ひな祭りにちなみ、ちらし寿司やハマグリのお吸い物が親しまれます。


📚 文化 ― 「桃始笑」に込められた生命のよろこび
桃の花は、春の喜びと再生の象徴。
『古事記』にも桃が魔除けとして登場し、人を災いから守る力をもつとされてきました。
また、万葉の時代には「花咲く」を「花笑む」と書き、 自然の笑みと人の笑みを重ね合わせた表現が好まれました。
🗓 暦 ― 太陽黄経350°、春の盛りへ
啓蟄・次候は太陽黄経350°前後。
春分を目前に、昼の時間がさらに伸び、気温も安定して過ごしやすくなります。
令和8年の春分は3月20日。
春の中心へと歩みを進める時期です。
💬 ひとこと
桃色の花が風に揺れる。
そのやわらかな景色に、自然も人も笑みをこぼす――
「桃始笑」は、春の幸福そのものです。
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