🌫 雨水・次候 霞始靆(かすみはじめてたなびく)
目次
🌤 自然 ― 春霞が野山を包みはじめるころ
雨水の次候は「霞始靆(かすみはじめてたなびく)」。
“霞がたなびきはじめる”という意味で、令和8年(2026年)は2月24日ごろ、太陽黄経はおよそ335度。
冷たく澄んだ冬の空気がゆるみ、景色にやわらかなベールがかかる時期です。
遠くの山々は白く煙り、朝霧や薄靄が光をぼかします。
この霞は、春の湿り気と光の加減が織りなす自然の絵。
空気の中にやさしさが宿り、風景が“春の色”へと変わっていきます。
【雨水】 (うすい)
陽気がよくなり、雪や氷が溶けて水になり、雪が雨に変わる
月: 正月中 太陽黄経:330°

次候 霞始靆
(かすみはじめてたなびく)
霞がたなびき始める
🏠 暮らし ― 寒の水と仕込みの季節
水泉動の候は、「寒の水」が尊ばれる時期。
寒中に汲む水は雑菌が少なく清らかで、酒や味噌、醤油、納豆などの仕込みに最も適するとされてきました。
「寒仕込み」という言葉は、この季節の知恵をそのまま表しています。
また、この頃は「寒稽古」「寒中水泳」など、心身を鍛える行事も多く行われます。
厳寒に身を置くことで精神を清め、新しい一年に向けて心を鍛え直す意味が込められています。
寺院では「寒修行」や「寒念仏」などの行も行われ、冬の静寂が人々の信仰心を深める時間となりました。
家庭では、味噌や漬物、甘酒などの仕込みが進み、保存食を整える大切な時期でもあります。
寒さの中で熟成が進むことで、味に深みと安定が生まれる――
自然の理とともに暮らす日本人の知恵が、ここに息づいています。
🏠 暮らし ― 春のあしらい、軽やかな日常へ
日差しが明るさを増し、昼の時間が伸びてくるころ。
衣服を一枚軽くし、部屋には花を飾って春の気を取り入れます。
旧暦では「霞始靆」は弥生三月の前触れ。
人々は新しい季節の装いを整え、心をやさしく解きほぐしていきました。
また、花粉や春風など気候の変化が出始めるころでもあり、健康を保つための食養生も大切にされました。
🍲 旬 ― 春霞のようにやわらかな味わい
春キャベツ、新玉ねぎ、菜の花、うどなどが出回り、淡くみずみずしい味覚が食卓を彩ります。
蒸し物や浅漬けなど、軽やかな調理で春の香りを楽しむのがおすすめ。
また、鰆や白魚などの春告魚も最盛期を迎えます。


📚 文化 ― 霞に託す春の情緒
「霞」は春の季語の代表格。
“霞立つ” “山霞む”などの表現は、春の風景を象徴する日本語の美しさを伝えます。
古来、霞は“命の息づく気配”を表すもので、万物が活動を始める季節を象徴しました。
静かな季節の動きを感じ取る感性が息づいています。
🗓 暦 ― 太陽黄経335°、光がやわらぐころ
雨水・次候は太陽黄経335°前後。
立春から約20日、日差しの角度が変わり、空の色が淡くやわらかさを増します。
次の節気「啓蟄」を前に、自然界は春の装いを整え始めます。
💬 ひとこと
山の向こうに霞がかかると、冬の透明な空気が少しやさしくなった気がします。
ぼんやりとした風景の中に、春が息づいているのを感じる――
そんな穏やかな時間の流れる候です。
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