🐔 大寒・末候 鶏始乳(にわとりはじめてとやにつく)
目次
🌤 自然 ― 鶏が春を感じ、命が動き出すころ
大寒の末候は「鶏始乳(にわとりはじめてとやにつく)」。
“とやにつく”とは、鶏が巣に入り、卵を産みはじめるという意味です。
令和8年(2026年)は1月30日ごろ、太陽黄経はおよそ310度。
厳しい寒さが続くなか、自然界では春の予感がわずかに息づいています。
陽の光は日ごとに長くなり、風の中にかすかなぬくもりが混じります。
この変化をいち早く感じ取るのが鶏――
光の長さに敏感な彼らは、冬の終わりを察し、再び卵を産み始めます。
寒の底で芽吹く「いのちの兆し」こそ、この候が伝える自然の声です。
【大寒】 (だいかん)
冷気が極まって、最も寒さがつのる
月:十二月中 太陽黄経:300°

末候 鶏始乳
(にわとりはじめてとやにつく)
鶏が卵を産み始める
🏠 暮らし ― 寒明けを待ちながら、春を迎える支度
「鶏始乳」のころ、暦は大寒の終わりへと差しかかり、 次の節気「立春」に向けて人々は春の支度を整え始めます。
農家では種籾(たねもみ)を選び、味噌や醤油の仕込みも仕上げの時期。
寒気の中で熟成が進む食材を見守りながら、家々では“春を迎える心の準備”が始まります。
また、寒のうちに産まれる「寒卵(かんたまご)」は縁起物。
滋養に富み、これを食べると一年を健やかに過ごせるとされました。
寒の水で仕込んだ酒や味噌とともに、冬の恵みを味わいながら春を待つ――
そんな穏やかな時間が、この候の暮らしを彩ります。
🍲 旬 ― 冬の旨味が極まり、春の味が兆す
この時期、冬の味覚は最も深みを増します。
寒ブリ、真鱈、アンコウ、サワラなど、寒海の魚が脂を蓄え、鍋や煮物にうま味を添えます。
また、大根や白菜、長ねぎなどの“寒締め野菜”は甘みが極まり、煮崩れせず、汁物にも最適です。
いっぽうで、早春の香りを運ぶふきのとうが姿を見せはじめ、冬の食卓にもほろ苦い春の彩りが加わります。
季節の交差点にあるこの時期―― 「冬の味を惜しみつつ、春を迎える舌」が育まれます。


📚 文化 ― 鶏の声に重ねる、春待つこころ
鶏は古来より、夜明けを告げる“陽の使い”とされました。
夜の闇を切り開く鳴き声は、光の復活を象徴します。
その鶏が産卵をはじめることを季節の指標とした古人は、自然の微かな変化の中に、確かな希望を読み取っていました。
俳句や和歌にも「鶏始乳」は“春を呼ぶ声”として詠まれ、冬の終わりに立ち上がる生命の音を象徴します。
静寂の中にひそむ温もりが、この候の魅力です。
🗓 暦 ― 太陽黄経310°、冬の終章
大寒・末候は太陽黄経310°前後。
厳寒の峠を越え、季節はゆるやかに春へと傾き始めます。
国立天文台の暦要項によれば、令和8年の立春は2月4日。
「鶏始乳」はその数日前にあたり、冬と春の境目を告げる候です。
凍てついた大地の下では、もうすでに“春の息吹”が動き出しています。
💬 ひとこと
寒さの底にあっても、朝の光は確かに明るくなっている。
その小さな変化を感じ取ることができる心こそ、自然とともに生きる力なのかもしれません。
冬を締めくくる鶏の声に、春の希望を重ねて。
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