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【大寒・次候】 水沢腹堅(みずさわこおりつめる)| 1月25日頃

大寒・次候  水沢腹堅(みずさわこおりつめる)

🌨 自然 ― 水沢(みずさわ)凍り、冬の静寂が極まるころ

 大寒の次候は「水沢腹堅(みずさわこおりつめる)」。
 “沢の水が厚く凍る”という意味で、寒さが一年で最も厳しくなる頃を示します。

 令和8年(2026年)は1月25日ごろ、太陽黄経はおよそ305度。
 立春を前にした数日のあいだ、空気は張りつめ、大地も水も動きを止めるように静まり返ります。

 川や池は厚い氷に覆われ、霜柱が立つ朝には地を踏む音が澄んで響きます。
 自然界は一見眠っているようですが、この静止の奥で、確かな“春への力”が蓄えられています。

 光は日ごとに明るさを増し、氷面には陽光が反射してきらめきます。
 水沢腹堅――それは、凍結と再生のはざまにある、美しい静寂の季節です。


【大寒】 (だいかん)

 冷気が極まって、最も寒さがつのる          

          月:十二月中  太陽黄経:300°              

次候 水沢腹堅
 (さわみずこおりつめる)

 沢に氷が厚く張りつめる

🏠 暮らし ― 寒の水と仕込みの季節

 水泉動の候は、「寒の水」が尊ばれる時期。
 寒中に汲む水は雑菌が少なく清らかで、酒や味噌、醤油、納豆などの仕込みに最も適するとされてきました。

 「寒仕込み」という言葉は、この季節の知恵をそのまま表しています。

 また、この頃は「寒稽古」「寒中水泳」など、心身を鍛える行事も多く行われます。
 厳寒に身を置くことで精神を清め、新しい一年に向けて心を鍛え直す意味が込められています。

 寺院では「寒修行」や「寒念仏」などの行も行われ、冬の静寂が人々の信仰心を深める時間となりました。

 家庭では、味噌や漬物、甘酒などの仕込みが進み、保存食を整える大切な時期でもあります。

 寒さの中で熟成が進むことで、味に深みと安定が生まれる――
 自然の理とともに暮らす日本人の知恵が、ここに息づいています。


🏠 暮らし ― 厳寒の守りと、春を待つ仕度

 この候のころ、人々は「寒明け」を待ちながら、家の内外を整え、冬を締めくくる支度を始めます。

 囲炉裏や火鉢の炭を絶やさず、寒風を避けながら、保存食や味噌の様子を見て、春の備えを整えるのです。

 また、厳しい寒気の中で生まれる「寒卵」や「寒酒」は、健康と繁栄を願う縁起物として珍重されました。

 寒の水で仕込まれた酒は、清く澄んで香り高く、この時期ならではの味わいとして親しまれています。

🍲 旬 ― 氷の下に眠る旨味

 海では、真鱈やカキ、寒ブリなどが脂を蓄え、旨味が最高潮に達します。

 山では、雪の下で甘みを増した“寒締め野菜”――大根、白菜、ほうれん草などが食卓を彩ります。

 特にこの時期の大根は煮崩れせず、出汁をよく含むため、冬の煮物に最も適した季節とされます。

 寒さが食材を鍛え、味を引き締める。 「寒の味」は、まさに冬の恵みの集大成です。

📚 文化 ― 静けさを聴く、冬の心

 水沢腹堅という言葉には、「動かぬ時間の尊さ」という意味も込められています。

 自然が凍りつくほどの寒さの中で、人は静寂に耳を澄ませ、自らの内側を見つめ直す――そんな“冬の精神”が表れています。

 俳句の世界では、「氷柱(つらら)」「氷る」「凍滝(いてたき)」など、この季節を象徴する季語が多く詠まれます。

 > 凍る音 夜の深さを また一つ
 といった句のように、凍てつく静けさの中に、時間の重みと季節の移ろいを感じる表現が多く残されています。

🗓 暦 ― 太陽黄経305°、寒の極み

 大寒・次候は太陽黄経305°前後。
 暦の上では最寒期であり、寒中の中心に位置します。

 国立天文台の暦要項によれば、令和8年の大寒は1月20日。
 そこからおよそ5日後、最も冷え込みの厳しい「水沢腹堅」に至ります。

 この寒を過ぎれば、季節はゆるやかに立春へ――氷の下で、春の水音が待機するような時期です。

💬 ひとこと

 冬の川面に張る氷、その下を流れる静かな水の音。
 動かぬように見えて、すべては春への助走を始めています。

 止まることもまた、動きの一部――水沢腹堅のころ、自然はそんな理(ことわり)を教えてくれます。


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