🌼 大寒・初候 款冬華(ふきのはなさく)
目次
🌤 自然 ― 雪の下で、蕗の花がほころぶころ
大寒の初候は「款冬華(ふきのはなさく)」。
“款冬”とは蕗(ふき)のこと。雪の下から顔を出すふきのとうが、春を告げるようにほころび始める情景を表します。
令和8年(2026年)は1月20日ごろ、太陽黄経はおよそ300度。
一年で最も寒い時期でありながら、自然界では確かな「目覚めの兆し」が現れます。
凍てつく大地の中、蕗のとうは雪の下で静かに育ち、まだ冷たい空気のなかに、春の香りを先取りして芽吹きます。
わずかに膨らむ蕾――それは春への約束。
寒さの底で、生命が確かに息づいていることを教えてくれる存在です。
冬枯れの野に、黄緑の小さな花が開く瞬間、
季節はほんの少し、次の章へと進みます。
【大寒】 (だいかん)
冷気が極まって、最も寒さがつのる
月:十二月中 太陽黄経:300°

初候 款冬華
(ふきのはなさく)
蕗の薹(ふきのとう)が蕾を出す
🏠 暮らし ― 寒仕込みと、春支度のはじまり
大寒のころは、味噌・醤油・日本酒などを仕込む「寒仕込み」の最盛期。
澄んだ空気と冷たい水が、発酵をゆっくりと進め、深い味わいを生み出します。
また、寒卵(かんたまご)や寒中水など、“寒”のつく食材は縁起の良いものとして珍重されました。
この頃になると、立春に向けた「春支度」も少しずつ始まります。
庭の手入れや種籾(たねもみ)の選別、農家では“春を迎える準備”が静かに進行します。
厳しい寒気の中にも、心の中では新しい季節への期待がふくらむ――
そんな“節目の支度”のころです。
🍲 旬 ― 冬の味わいと、早春の香り
寒ブリやタラ、アンコウなど、海の幸は脂がのり旬の極み。
また、大根・白菜・長ねぎ・ごぼうなど、寒さに鍛えられた冬野菜の甘みも際立ちます。
そして早春の便りとして登場するのが「ふきのとう」。
雪解けの野に顔を出すそのほろ苦さは、春の先触れ。
天ぷらや味噌和えにして香りを楽しむ人も多く、冬の終わりと春の入口を告げる味覚です。


📚 文化 ― 蕗のとうが伝える「春隠る」情緒
古来より、ふきのとうは“雪の下の春”を象徴する植物として愛されてきました。
『万葉集』にも「冬の雪に咲く花」として詠まれ、寒さに耐えながらも芽吹く姿が、生命力の象徴とされました。
この時期の俳句にも「ふきの花」「ふきのとう」などが登場し、“冬中の春”を描く題材として好まれます。
また、「款冬華」という漢語表現は、春の兆しをいち早く感じ取る人々の感性を映し出したもの。
静寂の中に光を見いだす――そんな日本人らしい美意識が、この候の名に込められています。
🗓 暦 ― 太陽黄経300°、冬の極みに春を抱く
大寒・初候は太陽黄経300°。
冬至からおよそ一か月が過ぎ、暦の上では冬の最終章です。
寒さは極まりますが、日脚(ひあし)は確実に伸び、朝の光は少しずつ明るさを増していきます。
国立天文台の暦要項によると、令和8年の大寒は1月20日17時07分。
その瞬間、季節の歯車は次の「立春」に向けて動き出します。
💬 ひとこと
雪の中からふきのとうが顔を出す――
その小さな芽を見つけた瞬間、寒さの中にも確かな希望が息づいていることに気づきます。
冬を越えようとする生命の力強さが、この「款冬華」の候にやさしく香っています。
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