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【小寒・末候】雉始雊(きじはじめてなく)| 1月15日頃 

🌤 自然 ― 霜の大地に、雉が春を告げはじめる

小寒の末候は「雉始雊(きじはじめてなく)」です。

雄の雉が縄張りを意識し、胸を張って「ケーン」と鳴きはじめるころをいいます。

令和8年(2026年)は1月15日ごろ。冷たい空気が澄みわたり、朝の吐息が白く広がります。

冬の静寂の中に、遠くから響く甲高い鳴き声。その一声は、春の兆しを告げる自然からの合図のようです。

冬至を過ぎた太陽は少しずつ力を取り戻し、日の長さも確実に伸びています。

光の角度がわずかに変わり、野の影が短くなり、鳥たちの声が重なりはじめる――

その最初の響きが、雉の鳴き声なのです。


【小寒】 (しょうかん)

 寒の入りで、寒気がましてくる

                       月:十一月節  太陽黄経:285°

末候 雉始雊	

(きじはじめてなく)

雄の雉が鳴き始める

🏠 暮らし ― 厳寒の仕舞い支度、立春への助走

小寒から続く寒中も、このころで折り返しを迎えます。

家々では火鉢やストーブの温もりを囲みながら、道具の手入れや繕い、味噌や醤油、漬物などの寒仕込みが仕上げの時期を迎えます。

寒の水で仕込んだ食材は味が引き締まり、昔から「寒の仕込みは良品になる」と言われてきました。

湯気の立つ鍋物や汁物が、寒の暮らしを支える大切な温もりです。

また、小正月(1月15日前後)には餅花を飾って豊作を祈り、正月飾りを焚き上げるどんど焼きの火にあたって、一年の無病息災を願います。

静かな寒の終盤は、春に向けて心と体を整える時期でもあります。

🍲 旬 ― 冬味のきわみ、体を温める滋味

海では、寒ブリ真鱈(まだら)アンコウなどが脂をたっぷり蓄え、まさに旬の盛りを迎えます。

白子やタラ鍋、アンコウ鍋など、冬の旨味が詰まった料理が食卓をにぎわせます。

畑では、大根・白菜・ごぼう・長ねぎなどの根菜が甘みを増し、煮物やおでん、味噌汁で体を芯から温めてくれます。

柑橘ではみかん柚子が香りを高め、口にすればほのかな春の香りを感じます。

また、寒さの中で産まれる**寒卵(かんたまご)**は滋養に富み、食べると一年健康に過ごせるといわれています。

寒気の中にこそ、次の季節を支える栄養が満ちているのです。


📚 文化 ― 国鳥・雉に託された再生の兆し

雉は日本の国鳥であり、田畑や里山の象徴でもあります。

古くから、雉の鳴き声は春を告げる音として親しまれ、歳時記でも「雉」「雉子鳴く」は春の季語に数えられています。

冬の静けさの中に響く雉の声は、太陽の復活、つまり“陽気の再生”を告げるものとして受けとめられてきました。人々はその声に、季節が確かに動き始めた希望を重ねたのです。

また、民間では「雉が鳴くと天気が変わる」「地震の前に鳴く」といった言い伝えもあり、自然の変化を敏感に伝える存在として敬われてきました。

雉始雊の候は、そんな“自然の声”を感じ取る感性が息づく季節でもあります。


🗓 暦 ― 太陽黄経295°、十二月節の結び

小寒は旧暦で十二月節にあたります。

末候「雉始雊」は太陽黄経295°前後に相当し、次の節気「大寒(300°)」の直前にあたります。

暦の上では“寒のただなか”を過ぎたころで、寒さはなお厳しいものの、光は確実に増えています。

人々の暮らしも、ここから少しずつ春を意識しはじめ、寒明け(かんあけ)=立春への支度が始まります。

この五日間は、冬の深さと春の兆しが同居する、季節の境目にあたる貴重な時間です。

💬 ひとこと

白霜の降りた畦道に、朝の陽が差し込みます。

遠くから響く雉の声が、静かな里にこだまします。

冬の底にありながら、世界は確かに春へと向かっています。


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ひとつ前の七十二候… 小寒・次候

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