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【小寒・次候】 水泉動(しみずあたたかをふくむ)| 1月10日頃


💧 七十二候「小寒・次候 水泉動(しみずあたたかをふくむ)すいせんうごく)」

🌤 自然 ― 地中の水が動き出すころ

 小寒の次候は「水泉動(しみずあたたかをふくむ)」。
 文字どおり、“地中で凍った泉が動き始める”という意味を持ちます。

 毎年1月10日ごろから15日ごろ、令和8年(2026年)では1月10日ごろ。
 寒の底に向かう最中でありながら、自然界ではすでに春への準備が静かに進んでいる時期です。

 冬の大地は一見、眠っているように見えます。
 しかし地中では、地下水がゆるやかに動き出し、植物の根が再び水を吸い上げる準備を始めます。

 この“動き”こそが、生命が再び循環を取り戻す最初のサイン。
 凍結した自然が内側から解けていく――それが水泉動です。

 朝晩はなお厳しい寒気が残りますが、
 日中に感じる陽のぬくもりにはどこか柔らかさが戻り、陽だまりの中に春の気配を感じることもあります。

 氷の下を流れる水音に、確かな「いのちの音」を聞くような、
 そんな時期なのです。


【小寒】 (しょうかん)

   寒の入りで、寒気がましてくる

                       月:十一月節  太陽黄経:285°

次候 水泉動	

 (しみずあたたかをふくむ)

 地中で凍った泉が動き始める

🏠 暮らし ― 寒の水と仕込みの季節

 水泉動の候は、「寒の水」が尊ばれる時期。
 寒中に汲む水は雑菌が少なく清らかで、酒や味噌、醤油、納豆などの仕込みに最も適するとされてきました。

 「寒仕込み」という言葉は、この季節の知恵をそのまま表しています。

 また、この頃は「寒稽古」「寒中水泳」など、心身を鍛える行事も多く行われます。
 厳寒に身を置くことで精神を清め、新しい一年に向けて心を鍛え直す意味が込められています。

 寺院では「寒修行」や「寒念仏」などの行も行われ、冬の静寂が人々の信仰心を深める時間となりました。

 家庭では、味噌や漬物、甘酒などの仕込みが進み、保存食を整える大切な時期でもあります。

 寒さの中で熟成が進むことで、味に深みと安定が生まれる――
 自然の理とともに暮らす日本人の知恵が、ここに息づいています。


🍲 旬 ― 氷の下に育つ恵み

 水泉動のころは、冬の食材がいよいよ旨味を極める時期です。
 寒ブリやタラ、アンコウ、サワラなど、脂がのって美味しさが最高潮に達します。

 また、冬野菜の代表・大根や白菜は寒さで甘みを増し、「寒締め野菜」として出荷されることも多くなります。

 寒気で締まった野菜は、繊維が柔らかくなり、煮ても煮崩れにくく、味がしみ込みやすいのが特徴。
 この季節の鍋料理は、まさに“旬を閉じ込めた温もり”そのものです。

 また、凍った水田や湿地の下では、早春の野草が静かに息づいています。
 やがて次の候「鶏始乳(にわとりはじめてとやにつく)」を迎えるころ、その命たちは地上へと姿を現し始めます。

 今はまだ冬の静寂の中にあるものの、自然の底流では確実に動きが始まっています。



📚 文化 ― 水の神と“再び動く力”

 古来より、水は「生命の源」であると同時に、“再生”を象徴する存在でした。

 水泉動は、天地の気が再び動き出す転換点として、陰から陽への流れを暗示しています。

 中国ではこの時期、井戸や泉を祀る祭礼が行われ、日本でも「井戸替え」や「水神祭」などが行われてきました。

 水を清め、豊かな恵みを祈る行事は、冬の終わりを見据える生活の区切りでもありました。

 また、「水泉動」という言葉自体が詩や俳句に好まれ、“静から動へ”という季節の力を象徴します。

 見えないところで自然が息づき始める瞬間が、この候の魅力です。


🗓 暦 ― 太陽黄経290°、寒の真ん中へ

 小寒の次候は、寒の入りからおよそ5日後。
 太陽黄経は290°前後くらいでしょか。冬の中心に位置します。

 この時期の寒さは一年でもっとも厳しく、東京でも最低気温が0度前後となる日が続きます。

 しかし、日脚(ひあし)は確実に伸び始め、午後の光には春の色が混じり始めます。

 寒さの裏にある“季節の呼吸”を感じ取ることができるのが、この「水泉動」という候なのです。

 暦をめくるたび、日々の変化がゆっくりと春へと向かっていく――
 その小さな積み重ねこそ、暦が教える「自然のリズム」です。


💬 ひとこと

凍てついた冬の地に、静かに水が動き出す――
見えないところで世界は少しずつ息を吹き返しています。

私たちの心もまた、寒さの底で何かが芽生えているのかもしれません。

寒の水が澄み、光を映すように、この季節を通して“内なる春”を見つめてみたいですね。


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