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【大雪・末候】鱖魚群(さけのうおむらがる)…12月17日頃~

鱖魚群 (さけのうおむらがる)鮭が群がり川を上る

🐟 自然 ― 鮭が群れをなして川を上るころ

 大雪の末候「鱖魚群(さけのうおむらがる)」は、鮭(さけ)が産卵のために群れをなして川を上る時期を表します。
 太陽黄経はおよそ265度、12月16日から21日ごろ。
 冬至を間近に控え、季節は一年でもっとも寒さに近づくころです。

 雪雲の間から差す薄日の下、北の川では力強く遡上する鮭たちの姿が見られます。
 長い旅を終えて、生まれ故郷の川へと帰る――
 その命の循環は、まさに自然の奇跡です。

 川辺には氷が張り、木々はすっかり葉を落とし、水面を打つ雪片が舞う。
 その静けさの中を、銀色の魚体が水をはね上げる光景は、冬の厳しさの中に確かな生命の躍動を感じさせます。

【大雪】 (たいせつ)

 雪がいよいよ降りつもってくる

                           月:十一月節  太陽黄経:255°

末候 鱖魚群 

 (さけのうおむらがる)

 鮭が群がり川を上る

🏠 暮らし ― 年の瀬の支度と、ぬくもりの味覚

 大雪も末候となると、いよいよ年の瀬の雰囲気が濃くなります。
 冬至を前に「ゆず湯」や「かぼちゃ煮」を用意し、日照が最も短くなる日の健康を願う風習が続きます。

 家々では大掃除が本格化し、煤払い(すすはらい)や神棚の掃除、しめ飾りの準備など、
 新しい年を迎えるための行事が整っていきます。

 囲炉裏の炭火が長く燃え、味噌汁や煮物の香りが立ちのぼる頃。
 寒さをしのぐだけでなく、家族や隣人が集うぬくもりの時間が増えていきます。

 この時期の食卓には「鮭」が欠かせません。
 塩鮭やいくら、寒風に干した新巻鮭(あらまきざけ)は、冬の保存食として日本各地に根づきました。
 年末の贈答品や正月の雑煮の具材としても重宝され、「冬の味」として古くから親しまれています。


🍲 旬 ― 味が締まり、寒のうま味が高まる

 鱖魚群の頃、魚介の世界ではまさに“寒の旬”。
 ブリ、カレイ、タラ、アンコウなど、寒気を受けて脂がのり、鍋や煮付け、焼き物にして絶品の味わいになります。

 特にタラは冬の主役。
 白子(たらの白子=雲子)は濃厚な旨味を持ち、冬の珍味として珍重されます。

 野菜では、冬キャベツ、長ねぎ、大根、ほうれん草が柔らかくなり、鍋物や煮込みにぴったり。
 根菜の甘みが極まり、味噌や醤油との相性も抜群です。

 果物では、みかん、りんご、柚子が旬。
 とくに柚子は冬至の風習とともに香りの主役となり、入浴や料理の薬味に使われて季節感を添えます。

 寒さが厳しくなるほど味が深まる――
 この季節ならではの「自然の贈り物」があふれる時期です。


📖 文化 ― 鮭の遡上に重ねる“いのちの循環”

 鮭が群れをなして川を上る姿は、
 古くから日本人の心に“いのちの循環”を象徴する風景として刻まれてきました。

 平安期の『延喜式』には、鮭を朝廷に献上する記録があり、江戸時代には北国から江戸へ“塩引き鮭”が運ばれ、冬の贈答品として重宝されました。

 また、鮭は多くの地方で「福を呼ぶ魚」とされ、年の暮れに食べる風習も根強く残ります。
 秋から冬にかけての鮭の遡上は、豊漁祈願や再生への祈りと重なり、人々の信仰や祭りの中でも特別な意味を持ちました。

 俳句の世界では、「鮭上る」「鮭の川」「寒鮭」などが冬の季語。
 厳寒の中でも力強く生き抜く姿が、生命の尊さや希望を象徴しています。


🗓 暦 ― 太陽黄経265度、冬至を目前に

 大雪の末候は、冬至のわずか数日前にあたります。
 昼の時間は一年で最も短く、夜は長く続く。
 陽の傾きが浅く、空気は澄みきり、星がいっそう輝く季節です。

 日本海側では連日の降雪が本格化し、平地でも初雪の便りが届きます。
 太平洋側は乾いた晴天が続き、放射冷却による冷え込みが厳しくなります。

 この節を越えれば、次はいよいよ「冬至」。
 太陽の力が最も弱まり、同時に新たな生命の再生が始まる節目です。
 自然界も人の心も、深い静けさの中で春の兆しを待つ季節です。


💬 ひとこと

 川を上る鮭の姿は、寒さを越えてなお“生きる力”を感じさせます。
 自然界が眠りにつくこの時期、そこには確かな「循環のリズム」が流れています。

 雪の音、風の音、そして静寂。
 すべてが冬の深みに溶け込みながら、春へと向かう見えない力を秘めている――。
 鱖魚群の季節は、生命の強さと静けさが共に息づく時間です。

次の七十二候… 冬至・初候

ひとつ前の七十二候… 大雪・次候

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