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雉|雉始雊(きじはじめてなく)|小寒・末候

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🐦雉始雊(きじはじめてなく) は、小寒の末候にあたる七十二候で、冬の寒さが極まる頃に「雄の雉が鳴き始める」ことを示す季節語です。
冬の田畑が静まり返る中、鋭く響く“ケーン”という雄の雉の声は、厳しい寒さのただ中で訪れる「季節の転換の予兆」ともいわれてきました。


1.雉(キジ)とは ― 日本の国鳥であり、里山の象徴

雉(キジ)は日本の固有種で、古くから人々の暮らしの近くに生きてきた鳥です。
水田・畑・河川敷など、人が手を加えた環境を好み、まさに 「日本の里の鳥」 と呼べる存在です。

  • 雄:鮮やかな緑の首、赤い顔、虹色の羽が特徴
  • 雌:枯れ草に溶け込む茶系の体色で保護色
  • 警戒心は強いが、縄張り意識も強く、朝夕によく鳴く

日本では桜、鶯と並んで文学に姿を見せる鳥で、『万葉集』にも詠まれるほど、古くから親しまれてきました。


2.なぜ「冬に鳴き始める」のか ― 求愛と縄張り宣言

候名の「雊(こう)」は、雄が雌を呼ぶ鳴き声 のことです。

冬は繁殖期ではありませんが、雄は春に向けて早くも縄張りの準備を始めます。
そのため、厳冬期である小寒の末頃から、雄の声がよく響くようになります。

● 鳴き声「ケーン」は何を意味する?

  1. 縄張りの主張
  2. 外敵への警戒
  3. 早春に向けた求愛行動の予兆

静寂な冬景色の中で響くこの声は、
「冬の底に差し込む一筋の生命力」
として、昔の人々には強く印象づけられたのでしょう。


3.中国と日本の候の共通性と読み替え

七十二候は中国が原型ですが、雉始雊は 中国でも日本でも違和感なく定着した稀有な候 です。

  • 中国:中原でも雉は身近な鳥で、冬に鳴き声がよく響いた
  • 日本:固有種キジが里山で生活し、冬に行動が活発化するのも同じ

季節象徴としての妥当性が非常に高く、日本でも“異議なし”で受け継がれた典型例 といえます。


4.文化における雉の象徴性

● 吉兆・勇気の象徴

『古事記』では、天皇の問いに使者として雉が立つ場面があり、
雉は「言葉を取り次ぐ鳥」として神聖視されました。

● 文学では「孤独」「響き」「春を呼ぶ声」

冬の里山に響く声は、時に寂しさ、時に力強さとして詠まれてきました。

※有名でない俳句の掲載は避けます(方針遵守)


5.現代の冬における雉 ― 見かける場面

冬の早朝、畑や土手で“ケーン”と鳴く声を聞くことがあります。
寒風を裂くように響く声は、春の足音が遠くで動き始めるような感覚をもたらします。

  • 多く見られる場所:河川敷・田畑・草地
  • 冬は草丈が低く、姿を見つけやすい季節
  • ペア形成は立春以降に本格化

厳しい寒さの中でも着実に季節が動いていることを知らせる存在です。


6.まとめ ― 冬の静寂を破る、季節の“前触れ”

雉の声は、冬の“凍りついた時間”の中に差し込む生命の兆し。
小寒・末候「雉始雊」は、古代から今に至るまで変わらず冬の象徴として息づいています。


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