❄ 小寒・初候「芹乃栄(せりすなわちさかう)」
■ 1.冬に勢いづく「芹」という植物
芹(せり)は、冬から早春にかけて瑞々しい葉を伸ばす、日本古来の香味野菜です。
寒さが深まる小寒のころ、地表の冷気にも負けず、むしろ力を増すように広がることから、七十二候では「芹乃栄」と表されました。
生命力が強く、清らかな水辺に群生する姿は、冬枯れの景色のなかでも明るさを添えてくれます。
■ 2.日本人と芹の歴史
芹は『古事記』『日本書紀』の時代から食用とされてきた、非常に古い食文化をもつ野菜です。
特に正月七日の「七草がゆ」で登場する七草のひとつとして有名で、“若草の息吹を取り入れる”という意味が込められています。
古くから薬草的な利用もあり ――
- 体を温める
- 胃腸の働きを整える
- 風邪を予防する
とされ、冬を生き抜く智恵として根付いてきました。
■ 3.芹の香りが選ばれた理由
冬枯れの季節、日本の人々は“香り”に季節の力を感じてきました。
水仙の清香、橘のかすかな香り。そして芹の爽やかな青い香りもまた、冬の気配を打ち払う象徴的な存在です。
七十二候が「芹の“栄える”ころ」と表すのは、単に栽培が盛んという意味ではなく、
「冬の底に潜む、生への力の象徴」 として読み取ると腑に落ちます。
■ 4.中国と日本の芹観の違い
中国の七十二候では、水辺の植物が季節の変化を象徴することが多く、日本もそれを受け継ぎました。
ただし日本では“春を呼ぶ野の草”としての意味がより強まり、正月文化と密接に結びつきました。
日本文化において芹が占める位置は、中国以上に季節感が濃いと言えるでしょう。
■ 5.現代の暮らしにある芹
今も冬場の鍋物や和え物、雑炊などで芹の香りが好まれています。
特に東北・関西の鍋文化では欠かせない存在で、旬を迎えた芹の歯切れの良さは格別です。
寒の入りを迎える小寒の時期、食卓に芹を添えることは、昔ながらの“季節の養生”そのものです。
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