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朔風と木の葉|朔風払葉|きたかぜこのはをはらう|小雪・次候

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1.「朔風(さくふう)」とは何か

「朔(さく)」は北を意味し、朔風とは“北から吹く冷たい風”のことです。
冬の到来をまっ先に告げる自然現象として、中国でも日本でも古くから季語として扱われ、生活や農耕に大きな影響を与えてきました。

この候名「朔風払葉(きたかぜ このはを はらう)」は、
冬への入り口で、最初の強い季節風が木の葉を一気に吹き払う
という情景を端的にとらえています。

秋の柔らかい風とは違い、朔風は鋭く乾いた風。
この風が吹き始めると、木々が一気に冬の姿へと変わります。


2.北風の季節はどのように生まれるのか

冬型の気圧配置が整うと、シベリア高気圧から冷たい北西季節風が流れ込みます。
これが日本海を渡る途中で水蒸気を含み、雪雲を生み出すのはよく知られていますが、晴れる地域でも気温の急降下をもたらします。

朔風が吹き始めるのは、ちょうど小雪のころ。
● 朝晩の冷え込みが急に強まる
● 乾燥が進み、木の葉が舞い上がる
● 風音が季節を変える合図になる

古来、人々はこうした微細な変化を「朔風」として捉え、暦に刻んだのです。


3.文化の中の朔風 ― 日本と中国の感性

■ 中国の朔風

七十二候の原型では、朔風は“冬の入りを告げる指標”として位置づけられていました。
農耕社会では、この風が吹くと作物の収穫が終盤に入り、冬支度に本腰を入れる時期とされます。

■ 日本の朔風

日本でも朔風は冬の季語として定着しています。
和歌や俳句の世界では、次のようなイメージで詠まれてきました。

  • 木の葉を散らす冷たい風
  • 人の心に「冬の影」を落とす風
  • 山や川の音を鋭くする風

朔風は“冬の気配が体でわかる瞬間”として、現代でも感覚的に受け継がれている自然のことばです。


4.暮らしの中で感じる朔風

朔風払葉のころは、生活にも変化が現れます。

  • 乾燥しはじめ、肌や喉のケアが必要になる
  • 洗濯物が乾きやすいが、冷え込みで外干しがつらくなる
  • 落ち葉掃きが本格化する
  • 暖房と加湿のバランスが重要に

また、北風によって体温が奪われやすくなるため、
「首(くび)がつく部分を温める」という日本の知恵がよく効く季節です。


5.七十二候の“読み替え”としての朔風払葉

日本の七十二候には、中国由来の候名が日本の気候・自然観に合わせて読み替えられた例が多くあります。
朔風払葉もその一つで、以下のような日本固有の季節感に寄り添っています。

  • 日本の落葉樹が一気に冬枯れの景色に変わる
  • 北風の鋭さが“冬の入口”として体感しやすい
  • 紅葉から冬枯れへの転換点が納得感をもって理解できる

こうした読み替えが自然であることが、今に続く歴史が物語っているのでしょうね。


6.締めくくり ― 朔風は冬の音

朔風払葉は、
冬の最初の音が風によって告げられる季節
と言えます。

木々が葉を落とすのは、風に逆らうのではなく、次の季節を静かに迎えるための準備。
朔風は、その“季節の節目”を知らせる自然からのメッセージです。


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