🐟 立春・末候 魚上氷(うおこおりをいずる)
目次
🌤 自然 ― 氷の下から魚が動き出すころ
立春の末候は「魚上氷(うおこおりをいずる)」。
“氷の解けた水面に魚が姿を見せる”という意味を持ちます。
令和8年(2026年)は2月14日ごろ、太陽黄経はおよそ325度。
まだ寒気は残るものの、川や池の氷が緩み始め、凍てついた水の世界に、ゆるやかな動きが戻るころです。
冬のあいだじっと身を潜めていた魚たちは、日の光とともに水の流れを感じ取り、静かに泳ぎはじめます。
水面に映る陽光は少しずつ明るさを増し、風はまだ冷たいながらも、春の匂いを運んできます。
自然はゆっくりと、確かな目覚めの時を迎えているのです。
【立春】 (りっしゅん)
寒さも峠を越え、春の気配が感じられる
月: 正月節 太陽黄経:315°

末候 魚上氷
(うおこおりをいずる)
割れた氷の間から魚が飛び出る
🏠 暮らし ― 寒明けと、春支度の整うころ
魚上氷のころは、「寒明け」を迎える時期。
暦の上でも冬の終わりが明確になり、日々の暮らしが春の調子を帯びてきます。
農家では畑の雪解けを見ながら、種まきの準備を始め、家々では雛人形を出して桃の節句の支度を整えます。
また、この時期は「立春大吉」の札を貼り替えたり、初午祭(はつうまさい)など、春を祝う行事が各地で行われます。
春への心の切り替えを象徴する、節目のころです。
🍲 旬 ― 春の気配を映す食卓
魚上氷の候は、海も川も動き始めるころ。
鰆(さわら)、白魚、しらす、わかめなど、春の海の恵みが顔を出します。
山では菜の花、うど、ふきのとうが香りを増し、冬の食材に代わって“春を味わう食卓”へと移り変わります。
まだ寒さの残る時期だけに、温かな汁物や春野菜の天ぷらで、ほろ苦さとぬくもりを楽しむのがこの頃の風情です。


📚 文化 ― 氷の解ける音、春の兆し
「魚上氷」は、冬の静寂がほどけていく瞬間を象徴する言葉。
古くから“氷解く音”“水ぬるむ”といった表現で、春を詩や俳句に詠む題材となってきました。
見えないところで息づく生命の気配を感じ取るのが、この候の魅力です。
また、春の訪れを告げる魚「春告魚(さわら)」の名にも、この時期の自然観が重ねられています。
冬の終わりを惜しみつつ、春を迎える心――それが「魚上氷」に込められた人々の感性です。
🗓 暦 ― 太陽黄経325°、春の本格始動
立春・末候は太陽黄経325°前後。
昼の時間は目に見えて長くなり、日差しに力が戻る時期です。
国立天文台の暦要項によれば、令和8年は2月14日ごろに相当。
この頃からは、二十四節気の次節「雨水」へと季節が移り、春の水が大地を潤し始めます。
冬と春の境界を静かに渡る、その中間点がこの候です。
💬 ひとこと
氷の下から、わずかに動く魚の影。
それは、見えないところで季節が確かに進んでいる証。
静けさの中に、再び巡るいのちの気配を感じながら―― 春の始まりをゆっくりと味わいたい時期です。
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