🌱 小満・次候「紅花栄(べにばなさかう)」
小満は、二十四節気の第8節気。
太陽黄経60度、春がしだいに満ちて夏へ向かう節目のころです。
次候「紅花栄」は、紅花の色が濃くなり、畑や川沿いを彩りはじめる季節を意味します。
小満は万物が生命力に満ち始める時期。
冬から春に蓄えた力が、地上へ一気にあふれ出し、植物の成長は最高潮へ向かいます。
空気は初夏の香りを帯び、朝露に光が満ち、日脚はさらに伸びて、初夏の気配が漂う頃です。
目次
🌿 自然 ― 緑が濃くなる季節
小満は、春分から大暑へつづく季節の折り返し地点。
自然界の動きはここでいちど加速し、
「初夏のエネルギー」が満ちてくるタイミングです。
植物はこの頃、**「伸びる」「満ちる」**という一方向の成長へ向かいます。
麦畑は穂を揺らし、田植えの準備が本格化し、山々は濃い緑へ移り変わります。
雨が降るたびに草木は vigor(活気)を増し、田畑に水の光が広がります。
野鳥は繁殖期を迎え、ヒバリやツバメの声が一段と賑やかに響きます。
野や山に足を運ぶと、湿った土のにおい、若葉の香りが体の奥に染み渡り、
「生きている季節」の息遣いを感じさせてくれます。
【小満】 (しょうまん) 月: 四月中 太陽黄経: 60°
すべてのものがしだいにのびて天地に満ち始める

次候
紅花栄 (べにばなさかう)
紅花が盛んに咲く
🍚 暮らし ― 初夏の支度と農作業の本格開始
この時期、各地で田植えの準備が進みます。
田に水が張られ、空が映り込み、苗を運ぶ人々の動きが景色の一部になります。
水鏡の田んぼは、小満の象徴的な光景のひとつです。
また、古くは 「麦秋(ばくしゅう)」 と呼ばれる季節。
秋に蒔いた麦が色づいて収穫を迎える時期で、
畑では風に揺れる黄金色の麦が輝く頃でもあります。
一年の中でもっとも「農の気」が高まる時期。
先人は作業の節目ごとに自然のリズムを見つめ、
季節への祈りを生活に刻み込みました。
🥬 旬 ― 初夏の味覚がそろいはじめる
小満の頃は、畑や市場に季節の食材があふれ始めます。
食卓は彩り豊かになり、体が求める「水分」「酸味」「青み」が勢いを増します。
| 分類 | 素材例 | 特徴 |
|---|---|---|
| 青物野菜 | ほうれん草、小松菜、サヤエンドウ、絹さや | 軽い甘味と青さ、香りの立ち上がり |
| 初夏の根菜 | 新じゃが・新玉ねぎ | 水分多く、瑞々しくて料理が軽くなる |
| 山の幸 | たけのこ(終盤)、わらび、ぜんまい | 春の名残と初夏の香り |
| 果物 | さくらんぼ、梅(青梅)、夏みかん | 酸味が身体を整える |
| 魚介 | 若アユ、イワシ、初カツオ | 川も海も活気づく頃 |
特に 青梅 は、小満の象徴的な食材。
梅酒・梅シロップ・梅干し――
家庭ごとの季節の仕込み文化が始まる頃でもあります。
台所には、瓶や氷砂糖の涼しい風景が並び、
「夏の準備」が暮らしの中に静かに立ち上がります。


🧡 紅花について
紅花は、古くから染料や薬用として重宝されてきた植物。
和名の 「末摘花(すえつむはな)」 は源氏物語でも知られ、
古代から日本文化と深いつながりを持っています。
ここでは、紅花は
小満の景色を象徴する小さな赤 として、季節の彩りのひとつとなっています。
💬 ひとこと
小満の景色は、決して派手ではありません。
けれど、
生きものの息、光、土の香り、水の輝き――
すべてが満ちてゆく高揚感であふれています。
外へ出れば、風が違う。
台所には初夏の香り。
食卓には季節の色が増え、
心に小さな上向きの力が宿る頃。
たくさんの「満ちる」が重なる季節――
それが小満です。
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