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【小満・末候】麦秋至(むぎのときいたる)…麦が熟し…

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自然 ― 雨と湿気の強まり…空気に重さが

小満の末候は 「麦秋至(ばくしゅういたる)」
読みは「むぎのときいたる」。文字どおり 麦にとっての“秋”、すなわち収穫期の到来 を示す候です。
小満の期間末、毎年5月31日ごろから6月4日ごろにあたり、
立夏から続いてきた初夏の陽気がぐっと強まり、田園は黄金色に染まります。

「秋」という字が使われるのは、麦の実りの季節が米の“稲秋”よりも早く訪れるから。
湿度が高くなる梅雨の前に刈り取らなければ品質が落ちるため、
農家にとっては最も忙しく、最も緊張感のある時期です。

田畑にそよぐ風は温もりを帯び、麦の波がさざなみのように揺れます。
遠くから見れば金色の海のようで、かつて日本画や俳句にも好んで描かれた光景です。
湿った空気のなかに夏の気配が濃くなり、
麦秋は “初夏のクライマックス” ともいえる美しさがあります。

夏準備のはじまり

雨と湿気が次第に強まり、空気に重さが宿るようになります。
この重さは、命の成長を支える湿り気でもあり、
麦秋の風がその境目をやさしく教えてくれます。

麦の収穫が終わると、
田んぼは田植えの準備へと移り、
日本の農村は “麦から稲へ”作業のバトンが渡される時期 を迎えます。


【小満】 (しょうまん) 月: 四月中  太陽黄経: 60°  

        すべてのものがしだいにのびて天地に満ち始める         

末候

麦秋至 (むぎときにいたる)

麦が熟し麦秋となる


🍃 暮らし ― 麦の国、日本の原風景

稲作の国という印象が強い日本ですが、
実は 古代では麦こそが主食に近い存在 でした。
奈良・平安期の文献には、春播きの麦の栽培と収穫に関する記述が多く見られ、
飢饉や不作の際の重要な備えとして、大切に育てられてきました。

梅雨入り直前に刈り取られる麦は、乾燥させ、保存し、粉にして、
うどん・餅・団子・味噌の麴など文化の要として利用されます。
田舎の農村では、刈り終えた麦わらを結び納屋に吊るし、
神棚に捧げて豊作を祈った地方もあります。
麦わら細工、麦わら帽子の材料にも使われ、
暮らしの知恵と手仕事を支えてきました。


🥢 旬 ― 初夏の恵みがそろう頃

麦秋の頃は、畑と市場が最もにぎわう季節でもあります。
湿度の上昇とともに、野菜がぐんぐん力を増すタイミング。

■ この季節の代表的な旬食材

  • 新じゃが・新玉ねぎ・新にんにく
     瑞々しさと香りが格別。初夏の食卓を彩る野菜たち。
  • そら豆・スナップえんどう・絹さや
     畑の緑が深まるとともに、春の豆が最終盤へ。
  • 初鰹(はつがつお)
     黒潮とともに北へ向かう力強い味わい。
  • スズキ・アジ・イサキ
     脂がのる直前の引き締まった身が魅力。

そして、麦秋を象徴する旬といえば――
麦を使った料理が一年で最もおいしく感じられる頃
ざるうどんやそうめん、冷麦など、冷たい麺の季節が始まります。


📚 文化 ― 麦秋の詩情と俳句

「麦秋」は、俳句の世界では 夏の季語 として扱われます。
金色に染まる田園と、初夏の空気の清々しさが詠まれ、
田植え前の水田を背景に、季節の境界線を指し示します。

麦秋は、
「刈り取りの緊張」「収穫の喜び」「夏への期待」
が同時に息づく言葉。
田園の一年を象徴する節目として、今も大切に使われています。


💬 ひとこと

麦秋は、自然の強さと人の働きが響き合う季節。
黄金色の麦の波を眺めていると、
季節が確かに前へ進んでいることを静かに教えてくれます。

風が運んでくる香り、畑のざわめき、夕暮れの光。
目に映るものすべてが、夏の入口をたしかに示しています。


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