🌿 【小暑】(しょうしょ)|梅雨明け間近、夏の気配が満ちてくる】
小暑は、二十四節気の十一番目。季節は梅雨の終盤へ向かい、湿り気を残しながらも空気は次第に鋭く、太陽の光は白く強くなっていく。
雨が降れば蒸し暑く、晴れ間が出れば真夏を思わせる日差し。そのはざまで揺れる季節が、小暑である。
鳥たちは巣立ちを終え、草木は深い緑をまとい、田畑では早苗が風にそよぐ。季節はゆっくりと、しかし確実に夏の本気へと歩み始めている。
目次
🌤 自然 ― 湿りと熱気が混ざり合う季節の転換点
小暑は、雨と熱とがせめぎ合う時期だ。
梅雨前線は北へと押し上げられ、湿った空気が大地にまとわりつく。曇り空の下、葉の裏まで湿りを含み、光を受けると蒸気が立つような空気感が漂う。
川辺にはホタルの姿が薄れ、代わって蝉の声が林の奥でかすかに響く。
夏の準備は着実に進んでいる。夜には温い風が流れ、肌にまとわりつく重さが季節の深まりを告げる。
雲のかたちは厚みを増し、遠くで雷鳴が響く日もある。
夕立の気配は日に日に濃くなり、雨上がりの路面には夏の匂いが立ちのぼる。
水辺では蓮の花がほころび、睡蓮の葉が波紋を抱きながら静かに浮かぶ。

【小暑】(しょうしょ)
暑気に入り梅雨のあけるころ
月: 六月節 太陽黄経:105°

🏠 暮らし ― 体調と湿気に気を配り、夏への身構えを整える
小暑の頃は、湿気と暑さによって体力を奪われやすい。
昔から「熱気より湿気が身に堪える」といわれたように、蒸し暑さは体に重くのしかかる。
通気を良くし、寝具を軽くし、食卓には酸味や香味を添えると良い。
庭では雑草の勢いが増す。雨の合間に土を整え、虫の発生に目を向ける時期でもある。洗濯物は乾かず、生乾き臭と格闘しながら、夏の到来を肌で学ぶ。
風鈴を軒に吊るすと、風の通りが可視化される。
涼を求める行為は、どれも理にかなっている。
昔の人は湿り気の中に風の動きを見極め、ほんの少しの涼を拾い上げて暮らしていた。
🍽 旬 ― みずみずしい野菜と、夏の青果が勢いづく
小暑は、食卓に夏野菜の濃い彩りが並び始める時期だ。
きゅうり、トマト、ナス、オクラ、ししとう――水分を多く含む野菜は火照った体を冷まし、塩と油を合わせれば疲労回復にもなる。
果物ではスイカが本格的に出回り、シャリとした食感と瑞々しさが夏の渇きを癒す。
桃の甘い香りは冷風のように部屋に広がり、旬の勢いが高まっていく。
魚ではハモが脂をのせ、ウナギは土用を前に注目が高まる。
「土用の丑」はもうすぐ――体力を落とさず盛夏を迎えるための知恵が、この節気にすでに芽を出している。

📚 文化・ことば ― 「暑中」はここからはじまる
小暑を境に「暑中」となる。
暑中見舞いはこの時期から出すのが正式とされ、相手の体調を気遣う言葉が交わされる。
暑さは厳しいが、その中で寄せる思いやりこそ日本らしい季節の作法といえる。
花では桔梗、撫子、百日紅が咲き、青田と白雲の対比が鮮やかに浮かぶ。
祭礼の準備も始まり、夏の灯りが小さくとも確かにともる。
暑さのただなかにあって、人の暮らしは季節の勢いと共に息づく。
💬 ひとこと
湿りを含む風の重さ、蝉の声が近づく気配。
小暑は「夏が来る」と気づかされる節気だ。
体調と暮らしを整えつつ、勢いづく季節に寄り添っていきたい。
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