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【秋分・初候】 雷乃収声(かみなりすなわちこえをおさむ)…9月23日~

暦に刻まれた候の意味…雷が鳴り響かなくなる

 秋分の初候は「雷乃収声(かみなりすなわちこえをおさむ)」といいます。

夏の盛りに鳴り響いていた雷が次第におさまり、雷鳴を聞かなくなる頃を示す言葉です。

稲妻のエネルギーも次第に収まり、大地は収穫の秋を迎える支度に入ります。

旧暦の感覚では、ここから「本格的な秋の空気」への移行が始まる節目です。

【秋分】(しゅうぶん)           月: 八月中     太陽黄経:180°

  太陽が真東から昇って真西に沈み、昼夜がほぼ等しくなる               

初候 雷乃収声

(かみなりすなわちこえをおさむ)

雷が鳴り響かなくなる


自然のうつろい

 秋分を迎える頃、昼と夜の長さがほぼ等しくなり、自然は一気に秋色を深めていきます。

 初候にあたる「雷乃収声」は、夏の盛りにあれほど頻発した夕立や雷鳴が、この時期になると次第に聞こえなくなることを意味します。

 雷は夏の象徴でもあり、田畑を潤す恵みの雨をもたらす存在でした。その雷鳴が遠ざかることで、人々は季節の移り変わりを実感したのです。

 空は澄み、日ごとに高くなり、朝夕にはひんやりとした空気が漂い始めます。

 虫の音が一層賑やかに響き、コオロギや鈴虫の声が夜長を彩ります。山々では木々の葉が色づき始め、稲田も黄金色に染まり、秋の実りの季節が近いことを知らせます。

暮らしと行事

 秋分の日は「祖先を敬い、亡くなった人を偲ぶ日」として国民の祝日に定められています。  

 彼岸の中日にもあたり、寺や墓地には多くの人が参拝に訪れ、先祖供養の花や供物が並びます。おはぎを供える風習も広く残っており、もち米とあんこの甘さに秋の実りを重ね合わせる暮らしの知恵が感じられます。

 また、この時期は農作業の大詰め。稲刈りを控えた農村では、天候を気にしながら稲の熟れ具合を確かめ、豊作への期待と安堵が入り混じる時期となります。

 漁村ではサンマやサバが旬を迎え、食卓に秋の味覚が並び始めます。

旬の食材・果物

 秋分の頃は、果物も最盛期。

 ぶどうは巨峰やピオーネが出回り、梨は幸水から豊水、新高梨などへと移り変わっていきます。いちじくは柔らかく甘味を増し、柿も出始めます。

 また、栗や新米も登場し、秋の味覚が勢揃いします。

 ふるさと納税の返礼品でも、これらの旬の果物や新米を詰め合わせたセットが人気を集め、秋の贈り物や家族の食卓を彩る存在となっています。

文化・歴史の中のこの候

 日本の文学や俳句では「秋分」はしばしば「彼岸」とともに描かれます。

 松尾芭蕉の句に「彼岸過ぎて日ぐらし寂しき」というものがありますが、昼夜が均衡し、そこから次第に夜が長くなることが、人々に寂寥感をもたらしたのでしょう。

 また、「雷乃収声」という表現には、自然を単に現象としてではなく「音の移ろい」として捉える日本人の感性が表れています。

 雷の音が遠ざかる――それは耳で感じる季節の変化であり、視覚だけでなく聴覚を通じて自然と共に生きる文化が培われてきたことがうかがえます。

月や暦にまつわる話題

 秋分は天文学的にも重要な節目で、太陽が真東から昇り真西に沈む日です。

 このため、西方浄土の思想と結びつき、彼岸会が広まりました。

 さらに、この時期は月の美しさも際立ちます。

 中秋の名月(旧暦8月15日)は多くの場合、秋分の前後に巡ってきます。

 2025年の中秋の名月は10月6日ですが、秋分の頃にも澄んだ夜空に月が冴え冴えと輝き、観月の好機となります。

 また、秋分期には月食や惑星の接近といった天文現象が重なる年もあり、暦のうえでも特別な注目を集める季節です。

 古来、人々は夜空に浮かぶ月や星を見上げながら、季節と人生の折り返しを重ね合わせてきました。

ひとこと

 雷の声が遠ざかり、虫の音とともに秋の訪れを告げるこの頃。昼と夜が釣り合う一瞬の均衡は、自然のリズムを肌で感じさせてくれます。

 祖先を想い、秋の実りに感謝し、澄んだ夜空に浮かぶ月を眺める。

 秋分・初候は、自然と文化、そして人々の暮らしが美しく交差するひとときです。

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