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暦が告げる季節の移ろい…燕が南へ帰って行く
「玄鳥去(つばめさる)」は、白露の末候にあたり、9月18日ごろから22日ごろまでを指します。
燕(つばめ)は春から夏にかけて日本に渡ってきて人々と共に暮らし、温かな時期を象徴してきました。
そして、「その燕が去る=秋本番へと向かう」ことを示す言葉が、この「玄鳥去」です。燕が去るということは、夏の終わりと秋の雨、あるいは長雨の前触れであることをも現しています。
季節の入れ替わりを告げる風物詩です。
【白露】(はくろ) 月: 八月節 太陽黄経:165°
しらつゆが草に宿る

末候 玄鳥去
(つばめさる)
燕が南へ帰って行く
自然の移ろい
この時期は昼と夜の長さがほぼ同じとなり、秋分を目前にして陽射しはやわらかくなります。朝露に濡れる草原はひんやりとした空気をまとい、昼間は心地よい風が吹き渡ります。
ツバメだけでなく、夏の昆虫たちも次第に姿を消し、代わって赤とんぼやバッタなど秋の虫たちが目立つように。夜には虫の声が重なり合い、澄んだ大気とともに秋の静けさを感じさせます。
暮らしと文化
ツバメは農家にとって「吉鳥」と呼ばれ、家に巣を作ると豊作や家運隆盛の兆しとされました。そのツバメが去るのは、豊作を祈る季節から収穫を迎える季節への移行を象徴しています。
また、秋の彼岸を前に地域の寺社では彼岸花が一斉に咲き、墓参や供養の準備をする頃。古来、自然の移ろいと人々の暮らしは密接につながってきました。
一方で、この時期は全国各地で秋祭りが盛んに行われる時期でもあります。京都の「八朔祭」や、稲刈りを祝う各地の収穫祭。伝統芸能や神輿行列が街を彩り、豊かな実りに感謝する心が文化に息づいています。
旬の味覚
白露末候は果物・食材の実りが一気に充実する時期。梨やぶどうは引き続き旬を迎え、シャインマスカットやピオーネなど甘みがのった品種が市場をにぎわせます。
いちじくも最盛期で、地域によっては「ドーフィン」「蓬莱柿」など特徴ある品種が並びます。
栗や新米も出回り始め、秋刀魚などの海の幸も加わって食卓は一段とにぎやかに。
ふるさと納税では「新米食べ比べセット」「旬のフルーツ詰め合わせ」「栗きんとん・いちじくジャム」など、この季節にしか味わえない贈り物が人気を集めます。


動植物との関わり
ツバメが旅立つ姿は、古代から多くの詩歌に詠まれてきました。「春に来て秋に去る」その律動は、人々に季節のサイクルを意識させるものでした。
また、田畑では稲刈りが始まり、稲穂をついばむ雀や稲を食害する害虫との闘いも見られる頃。農村では実りの喜びと同時に、収穫を守る営みも大切な仕事です。
季節の情感
白露末候は、まさに「夏の終わりと秋の始まり」を体感できる節目です。
去っていくツバメに一抹の寂しさを覚える一方で、実りの喜びや祭りのにぎわいに心を寄せる――日本人ならではの四季感覚が詰まった時期です。
ひとこと
ツバメが去り、稲穂が垂れ、虫の声が響く。季節は確実に深まり、私たちの心に「もののあはれ」を呼び覚まします。
空を見上げれば澄んだ月と星々。足元には稲穂と彼岸花。
秋の入り口に立つこのひとときに、自然と人の暮らしの調和を見出すことができるでしょう。
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