暦に刻まれた自然の息づかい 鶺鴒(せきれい)が鳴き始める
「鶺鴒鳴(せきれい なく)」は七十二候による白露の次候で、例年9月12日ごろから17日ごろを指します。
鶺鴒は、尾を上下に振りながら歩く小鳥で、日本の川辺や田畑に広く見られます。
秋が深まる頃、その鳴き声がはっきりと耳に届くようになり、季節の移ろいを告げる存在として古来から親しまれてきました。
【白露】(はくろ) 月: 八月節 太陽黄経:165°
しらつゆが草に宿る

初候 鶺鴒鳴
(せきれい なく)
鶺鴒(せきれい)が鳴き始める
自然の移ろい
この時期は、朝夕の涼しさが一層際立ちます。田んぼでは稲穂が黄金色に垂れ、農村風景は秋本番の趣に。彼岸花が田の畔に咲きそろい、赤と黄金のコントラストが見事です。
また、夏鳥であるツバメが南への渡りを始める時期でもあり、空の高みに舞う姿を見送るのも、この季節ならではの情景です。
夜になると虫の音がにぎやかになり、鈴虫やコオロギが競い合うように鳴き、秋の夜長を彩ります。
暮らしと文化
古くから鶺鴒は「夫婦和合」の象徴ともされ、日本神話では男女の営みを教えた鳥と語られることもあります。そこから「鶺鴒婚礼図」などの画題や婚姻儀礼との関わりも生まれました。
また、この時期はお彼岸を前に地域の秋祭りが各地で催されます。
五穀豊穣を祈る神事やだんじり・山車の引き回しなど、地域色豊かな祭礼はまさに実りの季節の到来を告げます。
旬の味覚
果物では梨やぶどうが最盛期を迎え、品種の幅も豊富。
特にシャインマスカットや巨峰などの高級品種は贈答用として人気を集めています。
いちじくも出荷が盛んで、「無花果ジャム」など加工品も話題。
また、栗の出始めや新米の登場もこの頃で、秋の食卓を一層にぎやかにします。
ふるさと納税では「旬の詰め合わせ便」や「農家直送の完熟梨・ぶどう」が人気で、保存性の高い栗や米とあわせて選ばれる方も増えています。


月や星の情景
白露の季節は夜空が澄み渡り、月がひときわ美しく輝きます。
特にこの次候の頃は、旧暦八月十五夜=中秋の名月(令和7年は10月なんですが)が近づき、月見の話題が高まります。でもことし
秋分に近づくにつれ、昼と夜の長さがほぼ等しくなり、夜空を見上げる時間が心地よいものに。虫の声とともに眺める月は、平安の貴族たちが愛でた風雅を現代にも伝えています。
ひとこと
川辺を歩くセキレイの軽やかな姿に耳を澄ますと、夏の終わりと秋の深まりをしみじみと感じられます。
稲穂が揺れ、虫の音が響き、夜空には冴えた月――。暮らしの中に自然のリズムを見出せる季節です。
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