【寒露】(10月8日)…秋が深まり野草に冷たい露がむすぶ…/nanikorenet

季節の情景

 寒露は二十四節気の第十七節気で、太陽黄経195度に達する10月8日ごろに訪れます。

 名称の通り「冷たい露」が草木に宿る頃で、朝晩の冷え込みはいよいよ深まり、秋の終盤を告げる節目です。

 露は気温が下がって水滴となり、さらに冷えると霜へと姿を変えます。寒露の時期は、秋から冬への移ろいを感じる最初の段階といえるでしょう。

 空気は澄みわたり、秋晴れの日が増える一方で、北からの寒気が南下し、冷たい風が吹き渡ります。

 稲刈りを終えた田園は黄金色から静かな茶色へと変わり、野山は紅葉の彩りを増していきます。

 里山ではススキが穂を揺らし、野菊やリンドウといった秋の花々が咲き誇ります。

 渡り鳥の群れが列をなして南へ飛び立つ姿も見られ、季節の移ろいを鮮明に映し出します。

【寒露】(かんろ)
 
秋が深まり野草に冷たい露がむすぶ


  月: 九月節  太陽黄経:195°

暮らしと行事

 寒露は、生活においても冬支度を始める合図です。衣替えが済み、朝晩は暖房器具を出す家庭も増えてきます。農作業では稲刈りが大方終わり、農村では収穫祭や秋祭りが盛んに行われます。

 この時期の伝統行事には、十三夜の月見があります。

 中秋の名月(十五夜)に対して「後の月」とも呼ばれる十三夜は、栗や豆を供える風習があり、「栗名月」「豆名月」として親しまれてきました。

 十五夜と十三夜の両方を月見することが縁起がよいとされ、日本独自の月見文化として大切にされてきました。

 また、武道や芸能の稽古ごとは「寒露を境に鍛錬を深める」といわれ、精神面でも秋から冬に向けた心構えを促す時期とされてきました。

旬の味覚

 食卓には、晩秋の豊かな実りが並びます。

 柿は「甘柿」「渋柿」どちらも旬を迎え、干し柿作りが始まります。りんごはシナノスイートや秋映など中生品種が出回り、みかんの早生種も少しずつ市場に並びます。

 野菜では大根や白菜がぐんぐん育ち、鍋料理の準備が始まります。

 サツマイモや里芋といった根菜類は煮物や汁物に欠かせず、体を温める秋の味覚として重宝されます。 

 海の幸では秋鮭、サンマに加え、カニの漁も各地で解禁され、食卓をさらににぎやかにします。

文化・文学

 文学の世界では、「露」「雁」「秋深し」といった言葉が俳句や和歌の季語として詠まれてきました。

 松尾芭蕉の「秋深き 隣は何を する人ぞ」の句は、秋の静けさと人々の暮らしを見つめる情景をよく表しています。

 また、中国の詩文にも「寒露」の語は多く登場し、自然の冷え込みと人生の深まりを重ね合わせる表現として愛用されてきました。

 寒露は自然現象を超えて、人々の心に沁み込む季節語として長く受け継がれているのです。

暦と節目

 二十四節気において寒露は、秋分と霜降の間に位置し、秋から冬への分岐点です。

七十二候では、

初候「鴻雁来(こうがんきたる)」――雁が飛来し、冬鳥が南から渡ってくる。

次候「菊花開(きくのはなひらく)」――菊の花が咲き誇り、秋の代表花となる。

末候「蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり)」――戸口で虫の音が聞こえ、晩秋の夜を彩る。

と続きます。自然の細やかな移ろいを丁寧に描写し、寒露という名のとおり「秋冷の始まり」を暦の上に刻んでいます。

ひとこと

 冷え込みが増し、草木の露がひんやりとした輝きを放つ寒露。

 秋の深まりと冬の予兆を同時に感じる季節です。

 月見や収穫祭といった文化は、人々が自然と調和しながら季節の移り変わりを大切にしてきた証。

 寒露の空気を肌で感じながら、日常の暮らしにも小さな工夫を取り入れて、心豊かに過ごしてみたいものです。

二十四節気 寒露の次…霜降 工事中 

二十四節気 寒露のひとつ前…秋分

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