📍 【大暑・次候】土潤溽暑(つち うるおうて むしあつし)|土が湿り、空気が重くまとわりつくころ
目次
🌿 自然 ― 大地が水気を含み、蒸し暑さが頂点へ
大暑の半ばに訪れる土潤溽暑は、まさに「夏の体感が最高潮に近づく頃」。
降る雨は短くても激しく、打ちつけるように地表を叩き、やがて蒸気となって立ち昇る。
土は水を含み柔らかく、足を踏みしめると湿り気がまとうように返ってくる――
まさに溽(じょく=むしあつい)の文字のとおり、空気は肌にまとわりつく重たさを帯びる。
晴れ間は強烈で、入道雲は空に塔を立てるように沸き上がり、
午後には雷鳴が低く轟き、夕立へと変わることも珍しくない。
大気の上昇と飽和水蒸気が作る典型的な盛夏の景色――
洗濯物が乾いたそばから湿り、地面から立つ蒸気が地平をゆらす。
夜になっても涼しさは戻らず、日中の熱がゆっくりと街に留まる。
【大暑】(たいしょ) 月: 六月中 太陽黄経:120°
夏の暑さがもっとも極まるころ

次候 土潤溽暑
(つちうるおうてむしあつし)
土が湿って蒸暑くなる
🏠 暮らし ― 蒸し暑さとのつき合い方
昔から日本の家屋は、この季節に備えて作られてきた。
深い軒、木造の隙間、風を通す縁側――湿気と熱を逃がす知恵の形である。
現代の暮らしではエアコンが頼りになるが、
自然の涼もしっかり使えば体の負担が軽くなる。
- 打ち水
- すだれ・よしず
- 風鈴・風の通り道を作る窓の配置
- 朝の涼しい時間帯の家事・移動
さらに、熱中症対策は必須。
喉が渇く前の水分補給、適度な塩分、冷たい麦茶や梅干し、薄く冷えた味噌汁――
体の巡りを整えながら、湿り気を含む熱から身を守りたい。
🍉 旬 ― 水気を含むもの、瑞々しさが生きる季節
土が潤い、気温が高まるほど、旬の食材は瑞々しく育つ。
| 果物・野菜 | 状態・味わい |
| すいか | 体を冷ます代表格。甘みと水分が夏の渇きを癒やす |
| 桃 | とろりと香り高く、追熟でさらに甘みが増す |
| とうもろこし | 収穫直後は特に甘く、ゆでても焼いても旨い |
| きゅうり・トマト・なす | 水分とカリウムで暑気払いに |
大地の潤いが、作物に水と力を与える――
土潤溽暑は「旨味が水分と共に育つ季節」でもある。


📚 文化・ことば ― 土用・丑の日・夏の調整力
大暑は「土用」の時期と重なる。
丑の日のうなぎが有名だが、もともとは 暑気払いの栄養補給 として
瓜・梅干・しじみなど、夏の養生食品が広く選ばれてきた。
また、この季は雷が多く「稲妻=稲の妻」とも書かれるように
実りに必要なエネルギーと考えられてきた。
湿と熱、雨と光――相反するものが共存してこそ稲は実る。
土潤溽暑は、日本の稲作文化を支えてきた節気でもある。
💬 ひとこと
外気は重くまとわりつき、風すらぬるい。
けれど、夕立のあとの風は一瞬だけ季節を変える――
蒸気が引き、空が広がるその一瞬に、夏の息継ぎを見ることができる。
湿りも熱も、自然の循環の途中。
疲れた日は、水と休息、そしてよく冷えた果物を。
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