楓と蔦 ― 晩秋の景色を染める植物
二十四節気「霜降」の末候は、
楓蔦黄(もみじつたきばむ)
です。
七十二候では、
「楓や蔦が色づく」
ころを表します。
秋の終わり、山や公園では木々の葉が赤や黄色へ変わります。
その中でも、楓や蔦は昔から晩秋の景色を象徴する植物として親しまれてきました。
ここでは、楓と蔦、そして「葉が色づく」という植物の変化について少し詳しく見ていきます。

🍁 楓とは
楓というと、手のひらのような形をした葉を思い浮かべる人が多いでしょう。
日本には、イロハモミジなどカエデ類の植物があり、秋になると鮮やかに色づきます。
同じ木でも、葉の色は一様ではありません。
赤。
橙。
黄色。
枝の場所によって色が違って見えることもあります。
その複雑な色合いが、秋の紅葉の大きな魅力です。
🌿 蔦とは
蔦は、ほかの木や壁、岩などに沿って伸びる植物として知られています。
秋になると葉が赤く色づく種類があります。
壁面を覆っていた緑の葉が、季節とともに赤く変わる姿は印象的です。
楓が木の枝を広げながら秋を彩るのに対して、蔦は何かに沿って広がりながら景色を染めます。
七十二候では、この二つが並べて取り上げられています。
🍂 「紅葉」は赤だけではない
「紅葉」という文字には「紅」が入っています。
そのため、赤くなる葉だけを指すように感じるかもしれません。
しかし、日本語の「もみじ」は、秋に葉が色づくこと全体を表す言葉として使われてきました。
黄色く色づくものは、
黄葉(こうよう)
とも書きます。
赤くなる木。
黄色くなる木。
その両方が混じり合って、秋の山や森の景色をつくります。
🌡 葉はなぜ色づくのか
春から夏の葉は、葉緑素によって緑色に見えます。
秋になって日が短くなり、気温が下がっていくと、落葉樹は冬へ向けた変化を始めます。
葉の中の葉緑素が減少すると、緑色が薄くなります。
すると、それまで隠れていた黄色系の色素が目立つようになります。
植物によっては、秋になると赤色系の色素が葉に増えるものもあります。
このため、葉は黄や赤へ変化していきます。
🍁 なぜ毎年同じ色にならない?
紅葉の色づき方は、毎年まったく同じではありません。
気温。
日照。
水分。
樹木の状態。
さまざまな条件が関係します。
同じ場所の同じ木でも、年によって鮮やかさが違って見えることがあります。
また、一本の木の中でも、日当たりなどによって葉の色に差が出ることがあります。
紅葉は、カレンダーどおりに一定の色になる現象ではありません。
🗾 紅葉は北や高い場所から進む
日本では、一般に気温の低い地域や標高の高い場所から紅葉が進んでいきます。
そのため、同じ「楓蔦黄」の時期でも、日本全国の景色は同じではありません。
山ではすでに葉が落ち始めている。
平地では今から色づく。
暖かな地域ではまだ緑が残っている。
そんな違いがあります。
七十二候は全国共通の紅葉開始日ではなく、晩秋を代表する色づきの景色を季節の言葉にしたものです。
🍂 紅葉のあとに「落葉」
葉が色づいたあと、落葉樹は葉を落としていきます。
秋の紅葉は、美しい景色として見るだけでなく、植物が冬を迎える過程でもあります。
葉を落とすことで、冬の低温や乾燥する環境を乗り越える植物があります。
つまり、
紅葉は葉の一年の終わりに近い姿
でもあります。
七十二候「楓蔦黄」が霜降の最後に置かれていることは、秋から冬への変化ともよく重なります。
🌿 「もみじ」という言葉
現代では、
モミジ=カエデの仲間
という印象がとても強くあります。
しかし「もみじ」は本来、葉が色づくことを表す言葉として使われてきました。
そのため楓蔦黄の読みも、
もみじつたきばむ
です。
ここでは、楓という植物だけではなく、秋の植物が色づくという季節の現象そのものを感じることができます。
📚 秋の七十二候の中の「色」
立秋から秋の七十二候を見ていくと、最初は、
風。
蝉の声。
霧。
といった小さな秋の兆しから始まりました。
そこから、
露。
渡り鳥。
霜。
小雨。
と進み、
霜降の最後に、
楓蔦黄
という鮮やかな「色」が現れます。
秋の入口ではまだ見えにくかった季節が、最後には山や木々を染めるほどはっきりした景色になります。
秋の七十二候全体を締めくくる候としても、非常に印象的です。
🌿 「楓蔦黄」に戻ってみる
葉が色づく仕組みを知ったあとで、
楓蔦黄
という言葉を見ると、その中に秋から冬への植物の時間が見えてきます。
春に葉を出し、
夏に光を受け、
秋に色づき、
やがて葉を落とす。
楓や蔦の色は、一年の植物の営みの終盤に現れる景色です。


💬 ひとこと
紅葉は、木々が一瞬で色を変えるものではありません。
少しずつ緑が薄れ、
黄色が見え、
赤が重なり、
やがて葉が落ちる。
その変化そのものが、秋から冬へ向かう時間です。
楓蔦黄は、晩秋の山や町を染める色から、秋の終わりを感じる七十二候です。
\ +深堀り です/
