「今年の漢字」は、一年を象徴する一字として年末に発表される、日本独自の文化的な記録です。
単年で見れば、その年の出来事を思い起こす手がかりとなり、
複数年を通して見れば、社会の関心や不安、価値観の移り変わりが浮かび上がってきます。
ここでは、**過去10年(2015〜2024年)を振り返り、
さらに2025年の「今年の漢字」=「熊」**を加えて、
この11年の流れを整理していきます。
目次
2015年「安」──安心が揺らいだ年
2015年の漢字は「安」でした。
一見すると穏やかな印象を与える文字ですが、この年の「安」は、
**「安心・安全が問われた」**という逆説的な意味合いを強く帯びています。
安全保障法制をめぐる議論、国際情勢の不安定化など、
「当たり前の安心」が揺らぎ始めた年として、多くの人の記憶に残りました。
2016年「金」──輝きと現実の両義性
2016年は「金」。
リオデジャネイロ五輪での金メダル獲得が大きな理由の一つでした。
一方で、「金」は成功や栄光だけでなく、
お金・不祥事・価値の重みといった側面も併せ持つ文字です。
喜びと現実が同時に語られた年でした。
2017年「北」──緊張感が続いた国際情勢
2017年の漢字は「北」。
北朝鮮をめぐるミサイル問題や国際的緊張が、
日常のニュースとして繰り返し報じられました。
地理的な方向を示す一字が、
不安の象徴として選ばれた点に、この年の空気が表れています。
2018年「災」──自然災害の記憶
2018年は「災」。
地震・豪雨・台風など、自然災害が相次ぎ、
「想定外」という言葉が何度も使われた一年でした。
自然の脅威と向き合う姿勢、
防災意識の重要性が改めて共有された年です。
2019年「令」──時代の節目
2019年は「令」。
元号が平成から令和へと改まり、
明確な時代の区切りを感じさせる年でした。
社会全体に、新しさと期待、そして慎重さが同居していた印象があります。
2020年「密」──生活様式が変わった年
2020年の漢字は「密」。
新型コロナウイルスの感染拡大により、
「三密」を避けるという考え方が、日常生活に深く入り込みました。
人と人との距離、働き方、集まり方が変わり、
生活様式そのものが転換した年として記録されます。
2021年「金」──再びの象徴
2021年は再び「金」。
東京五輪・パラリンピックでの活躍が大きな要因でした。
困難な状況下での開催であったからこそ、
「金」が持つ達成感や希望の意味合いが、
より強く意識された年でもあります。
2022年「戦」──遠い出来事ではなくなった戦争
2022年の漢字は「戦」。
ウクライナ情勢を中心に、
戦争が「ニュースの中の出来事」ではなく、
エネルギー・物価・安全保障を通じて生活に影響を及ぼしました。
平和の価値を、現実的な重みで考えさせられた年です。
2023年「税」──生活と制度への関心
2023年は「税」。
増税・減税・負担といった言葉が日常的に語られ、
制度と生活の距離が強く意識されました。
政治や経済が、
「自分の暮らしにどう関わるのか」が問われた年でした。
2024年「金」──成果と裏側
2024年の漢字は再び「金」。
パリ五輪での金メダル、大谷翔平選手の活躍など、
明るい話題が多くありました。
一方で、政治資金問題などもあり、
「金」は輝きと影の両方を映す文字として選ばれています。
2025年「熊」──生活圏に迫る現実
そして2025年の「今年の漢字」は、**「熊」**です。
全国から 189,122票 の応募があり、
「熊」は 23,346票 を獲得して最多得票となりました。
市街地への出没、人身被害、駆除を巡る議論など、
熊の問題は一部地域の話ではなく、
全国的な生活課題として共有されました。
自然と人との距離が変わりつつあることを、
象徴的に示す一字です。
10年+1年を通して見える流れ
2015年から2025年までを振り返ると、
- 安全・安心への不安
- 災害や感染症
- 国際情勢の緊張
- 制度と生活の関係
- 自然との距離の変化
といったテーマが、
形を変えながら繰り返し現れていることがわかります。
「熊」は、その延長線上にある、
暮らしの現場に最も近い象徴と言えるでしょう。
おわりに──漢字は時代のしおり
「今年の漢字」は、その年を評価する答えではなく、
後から振り返るためのしおりです。
10年後、20年後に見返したとき、
この時代がどのような問いを抱えていたのかを、
一字一字が静かに語ってくれるはずです。
