特集②:月齢と旧暦― 1か月の長さはどこから来たのか?

月齢とは何か

 月齢とは、新月(朔)を「0」として数え始め、月の形の移り変わりを示す数値です。

三日月や満月といった名称に加え、科学的に日ごとの姿を把握するために用いられます。

今日の月齢を知れば、夜空に現れる月の形を想像できる――そんな実感を与えてくれる指標です。

朔望月 ― 新月から新月まで

 月の満ち欠けの一周期を「朔望月」といい、その平均は約29.5日。これが「ひと月」の基盤です。

たとえば29日の月もあれば30日の月もあるのは、この29.5日を実生活に当てはめる工夫の結果なのです。

「1か月」という単位は、太陽ではなく月に由来していることがわかります。

太陰暦と太陽暦のズレ

 月の運行だけで作られる暦が「太陰暦」で、1年は354日になります。

しかし、実際の太陽年(365日)より短いため、季節が年ごとにずれてしまうという問題がありました。

農作業や行事に支障をきたすため、日本を含む多くの地域では「太陰太陽暦」を採用し、閏月を設けて調整しました。これが私たちの「旧暦」です。

旧暦から現代暦へ

 日本では明治6年に新暦(グレゴリオ暦)が採用されましたが、それ以前は旧暦が暮らしの基準でした。

七夕やお盆、中秋の名月などの行事は本来、旧暦に基づいています。

したがって新暦に換算すると毎年日付がずれるのは自然なこと。旧暦を意識すると、日本の年中行事のリズムがより理解しやすくなります。

月にちなむ豊かな言葉

 月齢とともに日本文化には多彩な呼び名が発達しました。

たとえば「十六夜(いざよい)」「立待月(たちまちづき)」「居待月(いまちづき)」「寝待月(ねまちづき)」など、月の出る時間や形に応じた言葉です。

これらは単なる天文現象ではなく、月とともに暮らした人々の感覚や情緒を今に伝えています。

現代に生きる月齢

 科学技術が進んだ今でも、月齢は身近な存在です。

国立天文台の暦計算室では、毎日の月齢や月の出没時刻を公開しています。

漁業では大潮・小潮を判断し、農業では田植えや収穫の目安に、また天体観測やアウトドアの計画にも役立ちます。

自然と生活を結ぶカレンダーとしての月齢は、今なお息づいているのです。

月と人が刻んだ「時間」の文化

 「1か月」という時間は、月の満ち欠けから生まれました。

旧暦の廃止後も、月齢や名月行事は人々の暮らしや文化に残っています。

月を眺め、月齢に思いを馳せることは、人類と月が共に刻んできた長い歴史を受け継ぐ行為にほかなりません。

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