「うるう時間」とは何か|何が議論されているのか?

記事内に商品プロモーションを含む場合があります。
  • URLをコピーしました!

「うるう時間」という言葉が出てきた

2026年8月、「うるう時間」という聞き慣れない言葉がニュースになりました。

「うるう年」なら知っている。

「うるう秒」も聞いたことがある。

では、

「うるう時間」とは何でしょうか。

現在、国際的に議論されているのは、私たちが使っている協定世界時(UTC)と、地球の自転に基づく時刻UT1との関係を大きく見直すことです。

その背景には、半世紀以上続いてきた「うるう秒」の仕組みがあります。


そもそも「うるう秒」とは

私たちが使っている時刻は、現在では非常に正確な原子時計を基礎としています。

ところが、地球の自転は原子時計のように一定ではありません。

わずかに速くなったり、遅くなったりします。

そこで、

原子時計を基礎とする時刻

と、

地球の自転に基づく時刻

とのずれを小さく保つために使われてきたのが、

うるう秒

です。

NICT(情報通信研究機構)によると、現在の協定世界時UTCは国際原子時TAIと同じ速さで進みながら、地球の自転に基づくUT1との差が±0.9秒を超えないよう、必要に応じて1秒を挿入または削除する仕組みになっています。


二つの「時間」がある

ここを少し整理してみましょう。

UTC(協定世界時)

現在、世界の標準となっている時刻です。

原子時計による国際原子時TAIを基礎としながら、地球の自転との関係も保つよう調整されています。

日本標準時(JST)も、このUTCを基準として、

JST=UTC+9時間

と定められています。

UT1(世界時)

こちらは、地球の自転に基づく時刻です。

地球の自転は完全には一定ではないため、原子時計が刻む時間とは少しずつずれます。

これまで、その差を小さく保ってきたのが「うるう秒」でした。


「1秒」の調整が行われてきた

これまで、UTCと地球の自転に基づく時刻との差が大きくならないよう、必要に応じて「うるう秒」による調整が行われてきました。

直近では、2017年1月1日に正のうるう秒が挿入されています。

このとき日本標準時は、

2017年1月1日 午前8時59分59秒

2017年1月1日 午前8時59分60秒

2017年1月1日 午前9時00分00秒

と進みました。

普段の時計にはない「8時59分60秒」が加えられたのです。

日本標準時では、正のうるう秒を実施する場合、月初めの午前9時直前に1秒を加える仕組みになっています。

1972年にうるう秒による調整が始まり、2017年1月1日の実施は27回目となりました。


なぜ「うるう秒」を見直すのか

たった1秒。

人の日常生活だけを考えれば、大した違いではないようにも思えます。

しかし現代社会では、正確な時刻が、

通信、

コンピューター、

人工衛星、

測位システム、

金融、

エネルギーなど、

さまざまな社会基盤で使われています。

「うるう秒」が入ると、UTCという時刻の流れに不連続が生じます。

さらに、地球の自転は不規則なので、うるう秒がいつ必要になるのかを長期的に予測することも困難です。

国立天文台も、うるう秒による時刻の不連続、システムへの影響、長期予測の難しさなどを問題点として挙げています。


2022年、大きな方針が決まった

この問題について、大きな転換点となったのが2022年です。

第27回国際度量衡総会(CGPM)は、

UT1とUTCとの差について、現在の最大値を2035年までに拡大する

ことを決定しました。

さらに、新しい許容値については、少なくとも100年間、UTCの調整を必要としないような値を検討することも求めました。

つまり、

1秒近くずれるたびに調整する

という現在の仕組みから、

もっと大きなずれを許容し、UTCを長期間連続して使う

方向へ動き始めたのです。


では「うるう時間」とは何か

ここで今回話題になっている、

「うるう時間」

が登場します。

国立天文台の暦計算室では、うるう秒に代わる考え方を説明する中で、

「うるう分やうるう時間?」

という考え方を紹介しています。

現在さらに具体的な案として検討されているのが、

UT1とUTCとの差の許容値を3600秒とする

というものです。

3600秒。

つまり、

60分=1時間

です。

ここから「うるう時間」という言葉が出てきます。


2027年5月20日を施行日として、何が検討されているのか

国立天文台によれば、2026年10月に予定されている第28回国際度量衡総会(CGPM)に、

|UT1-UTC|の許容値を3600秒

とし、

2027年5月20日を施行日

とする案が提出されています。

つまり現在議論されているのは、

UTCと地球の自転に基づくUT1との差を、最大3600秒まで許容できる仕組みへ変更する

というものです。

これによって、これまでのように小さなずれを「うるう秒」で頻繁に調整する必要がなくなり、UTCを長期間連続して運用できるようになります。


なぜ3600秒なのか

では、なぜ60秒ではなく、

3600秒=1時間

なのでしょうか。

2022年のCGPM決議では、新しい許容値について、

少なくとも1世紀にわたってUTCの連続性を確保できる値

を検討するよう求めています。

国立天文台の解説では、「うるう分」などの可能性も紹介されています。

しかし、うるう分程度では将来再び調整が必要になります。

3600秒という大きな幅を設定することで、非常に長期間にわたり、うるうによるUTCの調整を避けることができます。


「うるう秒」から「うるう時間」へ

ここで、考え方の違いを整理してみます。

これまで現在議論されている案
基準UTCとUT1UTCとUT1
許容される差±0.9秒以内最大3600秒とする案
調整うるう秒長期間、調整を避ける
UTCときどき1秒調整連続性を重視
背景地球の自転との一致デジタル社会での安定した時刻

「うるう時間」という言葉だけを見ると、新しい調整方法そのものに目が向きます。

しかし今回の議論で重要なのは、

UTCをできるだけ長く連続した時刻として使う

という考え方への転換です。


まだ正式決定ではない

この記事は2026年8月24日時点の情報をもとにしています。2026年10月の第28回国際度量衡総会(CGPM)の決定を受け、内容を更新する予定です。

ここは、この記事を公開する時点で重要なところです。

3600秒

そして、

2027年5月20日

という具体的な案は示されています。

しかし国立天文台の現在の説明でも、

2026年10月の第28回CGPMに案が提出されている

という段階です。

したがって現時点では、

「UTCとUT1との差の許容値を3600秒とし、2027年5月20日を施行日とする案が議論されている」

とするのが適切でしょう。

2026年10月の国際度量衡総会で、この案がどう決定されるのかが次の注目点になります。


うるう年・うるう月・うるう秒

ここで「うるう」という言葉を、暦の側から見てみましょう。

「うるう」は、今回突然生まれた考え方ではありません。

名称何のずれを扱う?方法
うるう年暦年と太陽年日を加える
うるう月太陰太陽暦と季節月を加える
うるう秒UTCと地球の自転秒単位で調整
「うるう時間」と呼ばれる考え方UTCとUT1許容範囲を最大1時間へ広げる案

仕組みはそれぞれ異なります。

しかし、共通して見えてくるものがあります。

それは、

自然の周期と、人間が作った時間との「ずれ」をどう扱うか

という問題です。


暦は「ずれ」を調整してきた

一年は、ちょうど365日ではありません。

月の満ち欠けの周期も、一年にきれいな整数回収まりません。

そして地球の自転も、原子時計のように一定ではありません。

人は昔から、

空を観測し、

時間を測り、

ずれを知り、

そのずれを調整してきました。

うるう年。

うるう月。

うるう秒。

時代によって方法は変わっても、

自然の時間と人間の時間をどう合わせるのか

という問題は続いています。


原子時計が正確だからこそ見えてきた「ずれ」

少し不思議なのは、時計が不正確だから問題が起きているわけではないことです。

むしろ逆です。

原子時計によって極めて正確に「1秒」を刻めるようになったからこそ、

地球の自転が完全には一定ではない

こととの違いが問題になりました。

地球は自然の天体です。

人間が決めた時計のように、毎日まったく同じ速さで回っているわけではありません。

正確な時計と、不規則に回る地球。

現代の時刻制度は、その二つの間にあります。


まとめ

「うるう時間」という聞き慣れない言葉が、いま注目されています。

その背景にあるのは、1972年以来使われてきたうるう秒の仕組みの見直しです。

2022年の国際度量衡総会では、UTCとUT1との差について、現在の最大値を2035年までに拡大することが決定されました。

そして現在、2026年10月の第28回CGPMに向けて、

許容値を3600秒

施行日を2027年5月20日

とする案が示されています。

つまり「うるう時間」をめぐる議論の中心にあるのは、

地球の自転とUTCとの差をどこまで許容し、世界の時刻をどのように安定して維持するのか

という問題です。

うるう年。

うるう月。

うるう秒。

そして「うるう時間」。

暦と時間の歴史をたどると、人間はずっと、自然の周期と時計との間に生まれる「ずれ」と向き合ってきたことが分かります。

どれほど正確な時計を作っても、その時計と比べる相手の一つは、

今も回り続けている地球そのものです。

「うるう時間」の議論は、現代の情報通信技術の問題であると同時に、人間は自然の時間をどのように測り、暦や時刻として表してきたのかという、とても古くて新しい問題なのかもしれません。


主な史料・参考資料

国立天文台 暦計算室「うるう秒がなくなる?」
うるう秒をめぐる議論の経緯、2022年CGPM決議、2026年CGPMに向けた「3600秒・2027年5月20日」の案などを確認する資料。

国立天文台 暦計算室「うるう秒がなくなる?」

国際度量衡局(BIPM)「第27回CGPM 決議4(2022)」
UT1−UTCの最大許容値を2035年までに拡大し、少なくとも1世紀にわたりUTCの連続性を確保できる新しい値を検討することを決定した一次資料。

CGPM「Resolution 4 of the 27th CGPM」

情報通信研究機構(NICT)「日本標準時」
国際原子時TAI、協定世界時UTC、世界時UT1、うるう秒の関係を確認する資料。

NICT「日本標準時」



\ +深堀り です/


よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!